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「もしかして、私の、その……、前の方……」
「前の方……?」
「だから、その私のええと、前の方の谷間というか花園と言うか、端的に言う
と穴ですけど……」
「シエル先輩、何を……。それが、どうしたの」
「遠野くん、満足してないんじゃありませんか? 物足りないとか、気持ち良
くないとか、締りが足りなくてあまり感じないとか、それで仕方なくお尻の方
ばかり……」
遠野くんがこちらを振り向く。
あ、呆れ顔。
だって、気になるんだもの。
「何を言うかと思えば。先輩のがゆるゆるだとか、締りが無いとか、がばがば
だとか、入れても全然面白くないとか、先輩のに入れるくらいなら手でやって
る方がずっとマシだとか……」
そこまでは言っていません。
「……そんな事ある訳無いでしょう。いつもあれだけきつきつに締め付けてく
れるのに。あれよりきつかったら入れるだけで一苦労で、何もしないうちに終
わっちゃうよ。それに中に入れると周りの襞が吸い付いてくるみたいで、気を
抜くと暴発しそうになるし……、何を寝ぼけた事言ってるんですか」
突然の力説に圧倒される。
遠野くんは一息ついて、我に返る。二人して顔を赤くしてもじもじとして目
を逸らす。
「ええと、俺も比較対象が無いのでなんとも言えないけど、先輩の中って暖か
いし気持ち良いし、先輩と一つになってると思うと、その……、それだけで幸
せだけど」
うわあ、遠野くんがこんな事言うなんて珍しい。
うう、目があわせられません。
「……それとも、それって遠まわしに俺のが小さすぎて、入れられても存在感
がありません、と文句言われてるのかな、もしかして」
「遠野くんこそ、あんな凶悪なのおったてて人をさんざ苛めておいて。いえ、
その、ごほん。……不安になる事があるんです。私なんかで遠野くん満足して
くれてるのかなあって。遠野くんの周りには秋葉さんとかメイドのお二人とか、
可愛い女の子いっぱいいるし」
「そんな事言ったら、俺の方こそ先輩をちゃんと喜ばせてるのか疑問に思う事
があるよ。先輩優しいから、そういう振りをして俺を傷つけないようにしてい
るだけなんじゃないかな、と思ったり」
「私、ただ遠野くんが力いっぱい抱きしめてくれるだけで、幸せですよ。他の
どんな上手い人に抱かれても、あんなに感じませんよ、きっと」
遠野くんがおいで、と手招きする。
「俺だってシエル先輩だから」
湯船から出かかって片足を下ろしてもう片方をあげた処で遠野くんが後ろに
回って体を押さえた。
「こんな事も平気で出来るんです」
え、何?
あ、お尻の谷間が手で開かれて、ああ、舌で、舐められている。
「ちょっと、遠野くん」
ちろちろと舌先でつついて、指で開いて潜り込ませる。
せっかく洗ったのに、これではまた。
……。
うん、でも気持ちいい。
好きだから、こんな事できるんだって遠野くん言ってくれた。
それに私も好きだから、こんな事を彼に許しているし、気持ちよくなっている。
それではもし……。
もしも……。
「遠野くん、ここではやめましょう。またガラス戸を割りそうになるのも嫌でしょう。
お風呂出て、ベッドまで行って続きを」
「そうだね」
体を手早く拭きっこして、またキスしたり体に触れ合ったりしながらベッドに向かう。
§ § §
「ええと、遠野くん、ちょっとしてあげたい事があるんです」
「え、何?」
上になろうか、下になろうかなどと思案していたらしい遠野くんが、機先を
制されてとまどった声を上げる。
今二人してベッドの上でお行儀悪く足を崩しいてる状態で向かい合っている。
ニコリと笑って膝で立ち、遠野くんににじり寄る。
トンと遠野くんの肩の一点を突くように押す。
僅かな力だけど、重心の要に連なるバランスが崩され、倒れる遠野くん。
肩を突いた右手をそのまま、胸、お腹へと滑らせ、軽く圧力を加え続ける。
同時に、左手を遠野くんの膝に差し入れ、上へと払う。
すっと宙に浮いた遠野くんの両足の間に体をすり入れる。
言葉にするとくどくどとした感じになるが、要は遠野くんを押し倒したのである。
「な、何をするんだよ、シエル先輩」
「いいから、じっとしてて下さいね」
そう言いながら両足を掴んで前に押す。遠野くんからすれば背で体重を支え
て体を二つ折りにされている状態。
すごい眺め。
遠野くんのお尻からおちんちんの裏までが目の前に晒されている。
普段、遠野くんにこんな格好させられてるんだ……。
自分の姿を想像してみて少し赤面。
「ちょっと、先輩、恥ずかしいよ、こんな格好」
「遠野くんは、私に対しての愛があるから私のお尻を舐めたり、いじったり、
挿入したりできるし、その行為に喜びを感じるんですよね」
「は、はい」
「私も、遠野くんへの愛があるからその行為を受け入れるし、喜びを感じちゃ
うんです」
「……」
遠野くんが、不安げな顔をする。
何か嫌な予感がしたとでも言うように……。
「愛ある二人だからこそ成り立つ関係。一方通行ではない交感。ならば、遠野
くんと私は愛し合っているんですから、役割を交換してもその関係は成り立ち
ますよね?」
「交換……? まさか……」
「そうです。私が遠野くんに……」
「冗談だろ、先輩」
「本気ですよ」
言いながら、遠野くんのお尻の穴を人差し指でちょんちょんと突付く。
「ここを可愛がってあげますよ」
遠野くんが硬直しているうちに、太ももをがっしりと押さえつける。
密接する肩や膝にも微妙に力を加え、抵抗不可の状態を作り出した。
「まずはキスからですかね」
顔を近づけくすんだすぼまりに舌先で触れる。
遠野くんからひいっと言う悲鳴が洩れる。
気にせず舌先を動かしチロチロと盛り上がった辺りを縦横無尽に探索すると、
面白いように遠野くんは反応し声が上がる。
「や、やめてよ先輩。そんな処汚いよ」
「さっき綺麗にしたばかりでしょう? それに私、遠野くんのだったら全然平
気ですよ」
ついでディープキスに移行。
指で少し開きながら唇を合わせて、舌を差し入れる。
さすがにきついですねえ。
ぎゅっと締まる狭道をほじるように、唾液を潤滑油として舌を尖らせてみり
みりと進入させる。
少し異臭。それでも構わず舌を奥深く入れて内部を舐め回す。
「うわあ、変な感じ。嫌だ、先輩、もう許して。ああ……」
息も絶え絶えといった風情の遠野くん。
まだ、始まったばかりですよ。
それでも、遠野くんの言葉に従い舌を抜く。
入れた時以上に抜く時に、遠野くんの押し殺したような息が洩れる。
わかりますよ。ちょっと変な感覚があるんですよねえ。排泄感覚にも似た……。
確かに自分はここまで相手に奉仕できるんだっていう被虐感の混じった快感
がありますね。それに相手に悲鳴をあげさせるのも嬉しいし。
遠野くんのを咥えておかしくなるまで追い詰めるのとはまた違った感覚。
「もう、気が済んだでしょう。先輩、なんだか体が変だよ」
「は? 何を言っているんです。やっと遠野くんのここほぐれてきたんじゃな
いですか」
「まだ、まさか今度は」
「次は指ですよ」
言うが早いか指を動かす。
ズブリ。
「うわあああ」
必死に身を捩ろうとするが、ほとんど動きが取れない。取らせない。
「やめて、お願い、シエル先輩。謝るから……」
「謝るって、何をです。私は遠野くんを愛しているだけですよ」
第一関節、第二関節……、はい、根元まで入りました。
「それほどは辛くないでしょう。前もって準備しておけば。私にいつもしてく
れるけど、遠野くん味わってみてどうですか?」
大きな動きはせず、少し押しては力を抜くという刺激を断続的に与える。
「ううっ、なんか熱いよ」
「そんなには嫌じゃないでしょう。それとも私なんかに大事な処触れられるの
は気持ち悪いですか」
「そこまでは言わないけど、変だよ」
「動かしますよ」
きついけどほどよくほぐれています。
ずずっと指を抜きかけてはまた奥深く差し入れる。
遠野くんの耐えている表情がたまらない。
ついつい、リズムを変えてみたり、中で指を曲げてみたり、違った刺激を与
えて反応を楽しんでしまう。
やっぱり抜く時の動きが違和感を与えるみたいですね。
とびきりゆっくりと指を抜いていく。
完全に抜いて、ティッシュでねとねとになった指を拭うと、ほっとした遠野
くんが顔をする。
「もう満足しただろう。シエル先輩……」
「はい、堪能しました」
前戯はね……。
「先輩……?」
体の自由を奪ったままで解放しない私に遠野くんが不安の色を浮かべる。
少々神経集中の時間が必要なんです、次の事するには。
ちょっと気を逸らして貰いましょうか。
「遠野くん」
「なに」
「錬金術とか魔術の領域では、いろいろ変わったものが必要なんです。童貞の
精液と処女の経血とか、死者の精液とかいった類のものが必要不可欠となった
り」
遠野くんの顔に疑問符が浮かぶ。
突然何を言い出すのだろう。そんな表情。
まあ、時間つぶしの雑知識ですから、聞いてて下さいな。機械的に話していて、
大部分の神経は己が内に向かってますので、きちんと話せてなくても許して下
さいね。
「そんな類いの材料やら触媒の一つで、なるべく近しい血を持つ男女の精液と
愛液なんてのを求めるケースがありましてね。まあ、親兄弟とかですね。都合
よく協力者とかいれば良いですけど、魔術師なんてのは家族や俗世のしがらみ
を捨てて偏屈に暮らしてたりしますから、そうそうはまっとうな手段で手に入
らない訳です。
それではどうするのか。自分の探求行為が世界で一番の重要事と思っている
ような壊れた連中は、双子の兄妹をかどわかして研究に使用したり、その為に
自分の子供をつくって酷い事をしたりなんて所業を行う事があるんです。だか
らモラルの府たる教会に睨まれて魔術師は排斥されたりするんですね」
あっ、廻ってきた、廻ってきた。自分でするの初めてだけど、こんなのまで
身についているんですね、ちゃんと。不本意ですけど……。
「それだけ苦労しても、その材料に不満があったりしましてね、それで彼らは
いろいろ試行錯誤したんです。そして名前が残っていないある魔術師が一つの
方法を思いついたんです。まあ、天才的な発想ですね。何だと思います?
それはね、自分自身を使用するという自己調達なんです。男は女になる事で、
女は男になることで自分自身から両方の材料を得る、確かにこれ以上近しい
存在はありませんよね。実現性云々より、そういうアイディアを思いつく事が
物事を成す始まりとなる訳ですから」
「でも、そんなの無理じゃないか。男が女になったり、その逆だったり。外見
だけならともかく」
「そうです。外観を変質させても、中身が伴わないと意味無いですね。
今ならばクローン技術とか使って凄いことが出来ますけどね。
でも限りなく近い処までは近づけたんです。例えば女が男になる場合は、き
ちんと男性器を備えて、擬似的な感覚器官まで備えてね。まあ、どちらかと言
うと当初の目的を逸脱して快楽追求の果ての結果みたいですけど。
で、これがその魔術研究の成果ですよ、遠野くん……」
体の中で廻していた力を発動させる。
体内に女性には不要な器官が形成され、活動し始める。
陰核がみるみる変貌を遂げ、膨らみ巨大化して、さながら男性の性器の如き
姿に変わった。
「な、な、な、何それ」
遠野くんが絶句している。
まあ、目の前でこんなもの見せられたら普通の人は驚嘆しますよね。
私もさんざ昔見た経験はありますけど、あんな、駄目、昔の記憶遮断。
「まさか、まさかシエル先輩、まさか?」
「そのまさかですよ」
《つづく》
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