Fall in LOVE
                  阿羅本 景


「……手伝おうか?」

 俺は上を見上げないようにしてそう言った。というのも、上を見上げてしま
うと見えてしまうかも知れない……見えるわけもないんだけど、李下に冠を正
さずとも言うわけだし。
 俺の目の前にあるのは脚立で、一見俺は脚立に向かっていたわりの声を掛け
ている様にも見える。脚立も酷使されれば労られても良いのであるが、声を掛
けるほどではない。

 問題は、この脚立の上に翡翠が乗っていることであった。
 つまりはその、翡翠の足下で俺が見上げてしまうとスカートの中をのぞいて
しまうかも知れないという事だった。翡翠のロングスカートだと見えて膝まで
か、とか中はペチコートがあるから、とか言うのは無粋な事だろう、うん。

「……いえ、結構です。これが私の仕事ですから」
「でも、すごく危なそうに見えるんだけど」
「それは……志貴さまが足下にいらっしゃるからです」

 翡翠の声が頭の方から降ってきて、なるほど、と頷く。
 翡翠がやっているのは窓ふきであった。洋館造りの遠野家は天井が高く、十
分な明かりを取り込むために窓も多い。従って廊下には背の高い窓がずらっと
並んでいる。

 それを掃除するのが翡翠の仕事だった。外側は流石に無理だから時々業者が
入っているみたいだけども、それも遠野グループの企業だという。そうでない
と秋葉が結界のように守るこの屋敷に入れるという法はない。

 翡翠は慣れたもので、どんどん上から窓を拭きながら脚立の段を下がってい
く。もともと窓もそんなに汚れていたように見えないんだけども……翡翠の基
準だと違うんだろうなぁ。

 翡翠が床に降りて一番下の窓硝子を化学雑巾で拭く。
 そのタイミングを見計らって、俺は両手でひょいと脚立を持ち上げた。

「志貴さま?」
「いいからいいから、続けて続けて」

 俺は次の窓の前まで脚立を運ぶと、据え付ける。
 流石に俺が乗って拭き始めると翡翠が不機嫌になりそうなので、据え付ける
だけに止まっていた。翡翠は俺を怪訝な顔で眺めるけども、にこやかに笑って
頷く。

「…………ありがとうございます。でも志貴さま……」
「ん?いや、ほら……本当はもっと翡翠を手伝いたいんだけども、俺は翡翠ほ
ど掃除は早くないからね」

 そうは言うけども、翡翠の清掃と整頓の能力は卓抜していた。そもそも締ま
っている部屋は多いとはいえ、この遠野邸がいつも綺麗なのは翡翠の力に寄る
ところが多かった。
 翡翠のスカートの中をのぞいてしまわないように後ろを向くと、カツカツと
ステップを靴が踏む音がする。翡翠のスカートの中を知らない訳じゃないけど
も……今覗くのはアンフェアだろう。
「いえ、でも志貴さまはいつも身の回りが整頓されていますので……姉さんよ
りは、その」
「ああ……でもそれは比較対照が悪い気がするなぁ」

 七夜さんは決してずぼらなのではない。キッチンなどは綺麗なモノだった、
が、整頓というモノに対するセンスがどこか狂っていた。それに、掃除をしよ
うとするとかならず何かのミスが発生する。これはなんというのか、俺たちに
はどうしようもない神の領域だった。

 ……思い出すだけで、ため息が出る。
 とりあえず、七夜さん以外のメンツの事を考える事にしよう。

「……秋葉って、やっぱり整理整頓の人だよなぁ」

 もう一人の身近な対象を考えて俺は呟く。妹の秋葉に限っては乱雑や胡乱な
る言葉を寄せ付けるのを断固として拒否する厳直居士なのだから、掃除が苦手
ということはないだろう。
 でも、返ってくる答えは――

「やはり、志貴さまの方が簡潔でいらっしゃいます」
「……育ちかね、それはやっぱり。ま、秋葉まで俺みたいだと翡翠も味気ない
だろうし」

 そうでしょうか?という声にそういうものだ、と頷き答える。

 きゅっきゅ、と窓を磨く音がする。

 翡翠は喋りながらも手を動かし続けていて、一番上から硝子を拭き終わって
いく。でも、この廊下の窓はまだまだ多い……転がり落ちる石を坂の上に押し
上げ続けるシシュフォスの労働だとは翡翠は感じないんだろう。

 ……なんとなく、そんな物に動じることなく掃除を続ける翡翠をからかいた
くなる。

 兄さん何をやっているのですか!と秋葉に見つかると叱られるだろうけども、
これはそれだ、うん、まだ稚気を失わない俺の若々しい心というわけで。

 ……とりあえず、七夜さんは辺りにいないな、うん。

 またしても脚立を運んで、翡翠が上に上がると頃合いを見計らって――

「……翡翠、その」
「なんでしょうか?志貴さま」
「ぱんつ履いてる?」

 ガタッ!

 俺の背中に脚立がぶつかった。
 アルミ材の強打される打撃に息が詰まってうずくまりそうになるが、そんな
事をしている場合じゃない。俺は踵で急回転して本能のままに手を伸ばす。腰
が泳いだ姿勢だけど大したことじゃない、早くしないと――

「はっ!」

 俺が伸ばした腕に、翡翠の腰が落ちてきた。
 背中から落ちる翡翠を間一髪のところで受け止める。脚立が大きな音を立て
て倒れたはずだけど、俺の耳にはその音は聞こえなかった。

 姿勢が甘い、支えきれない、だけど――
 翡翠を守らなきゃいけなかった。だから身体を下敷きにして――

「ぐ!」
「きゃ!」

 俺は翡翠の下に身体を入れ、俺の背中で床に――背筋に二人分の重量が掛か
る激痛がおそいかかるかと思って身を固くするけども。
 幸い、俺の身体の下にあったのは硬い石材の床ではなく、毛足の長い絨毯で
あった。畳ほどに衝撃を吸収してはくれないけどもそれでも……

「………志貴さま!」

 どすっと音を立てて、俺が仰向けに翡翠を受け止めて転がっていた。
 背中が痛い。無理して翡翠を守ったからだったけども、やっぱり無謀だった
か、肺の空気を衝撃で吐き尽くして俺は声も出ない有様だっが。

 でも、翡翠は守れた。だから満足だった。
 翡翠の身体の重みも、むしろ今は心地よく感じる。自分の身体の苦痛を無視
できるほどに、翡翠の身体を腕で感じることで――

 翡翠は驚きに蒼白になり、俺の身体をぺたぺたと触って確かめようとしてい
た。
 俺は首を一端逸らして苦痛のピークをやり過ごすと、翡翠になんとか笑って
無事だと答えようとする。でも、こんな馬鹿な真似をしたから俺の表情もさぞ
弱々しく見えた事だろう。

 ……馬鹿をやったのが俺だから、自業自得だったけども。

「いや、翡翠こそ落ちて怪我はないか?翡翠に怪我させたら七夜さんや秋葉に
合わせる顔がないし」
「私こそ志貴さんが身代わりに為られては立つ瀬がありません!お怪我は……」
「腰打ったかも知れないけども、立てないほどじゃないよ。遠野家のこの分厚
い絨毯が初めて役に立ったなぁ」
「私はどこもおかしくありませんが、志貴さまのお怪我の程を確かめないと、
姉さんを呼んできて」
「それほどじゃないけども、翡翠本当に……」

 ここまで言いかけて、俺は何か引っかかって口を閉ざした。
 ……いったい二人ともムキになって何を言い合っているのかと思えば……お
互いを気にしているばっかりで、まるで二人でお互いの尻尾を目掛けてぐるぐ
る走り回るような。

 ……わからない。
 なんでこうなってしまったのかは分からなかったけども、それが何かひどく
可笑しかった。翡翠は無事だし、俺は大過ない。なのにこんなに無我夢中でお
互いを気にしているのは、なんというのか。

 翡翠もじっと心配そうに俺を眺めていた。俺が下敷きになって、翡翠が馬乗
りに上になっている格好で、二人とも瞳を覗き込んでいて――翡翠の黒の中に
深い緑を秘めた瞳に、ふっと緊張の緩んだ色が移った。

 二人とも声もなく、しばらく見つめ合っていた。翡翠の息と香りと、その身
体の重みを感じる。押し倒されたような格好の俺は、出来るだけ翡翠を心配さ
せないように笑おうとして――

「…………」

 翡翠は無言で、小さくはにかんだ。
 それは安堵に醸し出された胸に染みこむような笑いで、俺も安心できる。

「……そっか、良かった。じゃぁ……」

 邪魔して御免、といって俺は立ち上がろうと思った。
 でも、翡翠は俺の身体を動きを感じている筈なのに、俺の身体の上から退こ
うとはしなかった。腕を床に着き、じっと俺の顔をまた神妙な顔に戻って覗き
込んでいる。

 ……おれ、なんか悪いコトを口にしたんだろうか?と心配になる翡翠の真面
目な顔だった。安心したはずなのに、また何か大変な事が起きたのかとちょっ
と不安になる俺。

「……翡翠?その、掃除は……続けなくて……」
「志貴さま……」

 姿勢を変えずに翡翠が尋ねてくる。はい?と俺が聞き返すと、翡翠は俺から
目を離さずに……でも、続きが翡翠からやってこない。しかしだからといって
翡翠は怒っているというわけでもなくて……なんだろう、困っているんだろう
か?これは。
 わからない。

 いつもなら仕事熱心にすぐ掃除に戻るはずの翡翠が、逡巡している。
 何か俺はその、まずいことを言ってしまったのか……でも、何がいったい。
まさかパンツのことじゃないだろうなぁ、うん、そんな事はない……かな?

 翡翠の顔が近づくと、耳元にむかって小さく囁きかけられる。
 小さな唇から吐かれる熱い息を耳に感じて、俺はちょっとくすぐったくて首
を捩る。

「志貴さま……そのままご覧になってくださいませ」

 ――何を?とは軽々しく聞けないなにかが翡翠にはあった。
 ようやく俺の上から立ち上がる翡翠を、みっともなく床の上で転がった姿勢
のままで見上げる。肘を着いてで背中を持ち上げると、わずかに痛みがあるが
……大したことはないか。

「翡翠……なに……?」

 俺は控えめに尋ねるけども、翡翠に答えはない。
 言い出さない変わりに、翡翠は窓を背にした立っていた。立ち上がったから
には落ちた衝撃で怪我とかをしていないんだろう。でも、それを俺に見せる為
じゃ――ない、筈。
 じゃぁなにを?わからない……

「志貴さま……翡翠は……私は、こんな風に……」

 翡翠がスカートの中程をエプロン毎掴んだ。
 何をする気なんだろう?翡翠は……でも、みるみるうちにそのスカートの裾
は持ち上げられていく。翡翠は、その、俺の前で見せるようにスカートをめく
っていく訳であり……何が起こってるんだろう、今。

 まだ日は高くて、それもこの家の廊下で。
 俺は床の上で寝ころんでいて、翡翠はその前でスカートをめくっていて。
 何がいったいどうなっているのか……

 翡翠のスカートの裾は、膝を越えて太股の上までまくり上げられていた。や
っぱりこんなことをするのは恥ずかしいと見えて、翡翠は額まで真っ赤になっ
て俯き加減でいた。でも、そうなると余計に俺と目線が合ってしまう訳で……

 翡翠は、俺に、下着を見せようとしているんだ。
 ようやくそれが頭の中に入ってくるけども、俺は息をするのも理解をするの
も出来なくなっていた。翡翠が胸元までスカートを引き寄せて、俺に見せてく
れたその股間には――

 ――ショーツがなかった。

 いや、そこにあるのは綺麗な肌の中にすっと一本走った縦筋だけだった。
 陰毛すらなく、まるで小学生の女の子の又のように――見た事はないんだけ
ども、きっとそうなっていると思うほどに、翡翠の股間には一本の恥毛もなく、
そしてそれを覆い隠す下着もなかった。

 ぴったり合わさった太股の筋が、そのままお腹に切れ上がっているような、
女陰の筋。
 俺はそれに解けそうなほどの視線を注ぎ、身体の痛みも言葉も息も忘れて、
ただ全身の神経が視神経になってしまったように――翡翠を熱い視線で犯した。

 翡翠の膝が微かに震え、スカートも裾も今にもそれを覆い隠してしまいたそ
うに動く。
 でも、翡翠はその石の力で俺の目の前に、自分の恥ずかしい女性の部分を晒
していた。それも下着もなく、恥毛すらない剥き出しの女性の中心を――

「こんな風に……翡翠がしているのをご存じであのような事を、おたずねに…
…」

 そんなつもりは毛頭なかった。
 まさに瓢箪から駒が、藪をつついて蛇を出したようなものだってけども、そ
の駒は千里の馬で、蛇は吉兆の白蛇のような……なんといったらいいのか、分
からない。

 でも、翡翠の剥かれた縦筋が、今、目の前にある。
 それを見せてくれる翡翠の心の中にあるのと、俺の心に抱くものはきっと同
じ筈で……翡翠がここまで恥ずかしい事をしてくれたのは、間違いなく、俺を
求めての事だった。

 なら、俺も――俺の心の求めるままに、翡翠を求める。
 そうある事を翡翠も望んでいるはずだった。そうじゃなきゃ、こんな……誘
うような行動を内気な翡翠がをするはずはない。

「…………翡翠」

 俺が翡翠の目を見ると、翡翠はこくんと半ば涙目で頷いた。
 翡翠は、スカートを銜えると……今度は両手の指を自分の縦筋に宛う。スカー
トは持ち上げられたままで、晒された翡翠の秘所は今度は翡翠の指で……

 くにっと。

 襞が押し広げられる。そこに覗いたのは、粘膜の襞と――
 わからなかった。何がそこにあって俺がどうなって翡翠がどうするのかを。
 だから俺は翡翠の身体に、指で押し広げられた剥き出しの翡翠の女性器に進
んでいき、その太股をかき抱き、顔を股間に押し当てた。

 そうするのが当然だった。翡翠がそう望んでいる、だからこうして……
 俺の唇が、翡翠の下の唇に触れる。翡翠の牝の香りが立ち上り、俺を目眩を
起こさせそうになる。
 それでも俺は翡翠の押し広げられた女性器に唇と舌を進める。翡翠の指が震
えている……いや、震えているのは指だけじゃない。
 窓に背中を預けて、翡翠は俺にされるがままになっていた。

 前から恥毛のない翡翠の割れ目を舐めるのは、何とも不思議で心地よい体験
だった。いつもなら唇にまとわりつき、鼻をくすぐるあの縮れた毛がない――
つるりとしたよく手入れされた翡翠の丘を俺は吸った。舌を伸ばし、大陰唇の
内側を舐め這う。

「んっ……んぅ……」
「翡翠……こんなにつるつるに剃って、ショーツも履かないで……俺にこんな
事をされたいから、こうしていたのか?」

 そう言いながら、俺は舌を伸ばして割れ目に突き入れた。
 クリトリスの上を俺の舌が擦ると、びくびくっと強く身体が竦む。翡翠の弱
いのがここだとは知っていた……でも、立ちながら責められる翡翠はいつもよ
りもっと感じやすい様子だった。
 俺はそのまま、翡翠を舌で愛撫する。膝の内側を押し、太股の間に顎を入れ
るとまるで、剥いた果実にかぶりつくように翡翠の秘部を貪った。
 
 つるりとした剃毛済みの秘所は、脚の付け根からお尻に至るまでの広がって
いた。そこに俺は唇と舌で、唾液の跡を記していく。そして、それに翡翠の内
側から溢れる愛液を混ぜ込んで……俺はすすり、舐め、こね回し、震わせて翡
翠の中を夢中で貪った。

「あ……ああ……」

 視界が真っ暗になり、頭の上にスカートが被さる
 翡翠が我慢できなくなったのか、裾を離して俺の上にスカートをかぶせてし
まっていた。でも、翡翠のスカートの中に潜って、廊下でつるつるの翡翠の陰
部を舐め上げるというこの変質者の様な行動に、俺は……興奮していた。

 興奮しない方がおかしい。真っ暗なスカートの闇の中で、翡翠のガーターと
太股の隙間を撫で、頭をもぞりと動かし音を立ててしゃぶって翡翠の羞恥心を
くすぐろうとする。
 
「志貴さま……ああっ、志貴さまがこんなに……あはぁ……んんう!」
 
 スカートの上から、ぎゅっと頭を押さえられる。それでも俺は止まるところ
を知らない。
 知るわけがない。だって、俺の股間はズボンの中で硬く硬くふくれあがり、
反り返ろうとしていた。真っ暗な中での翡翠の味が、無闇に俺を興奮させる。

「翡翠……」

 俺は、ようやく翡翠のつるつるの秘所を責める手を緩めた。
 ゆっくりとスカートの中から出ると、外の明かりが眩しい。でも、俺は翡翠
の前に立つと上気させて荒い息をする彼女の手を取った。
 手首を掴み、翡翠の手を導いたのは――俺の硬い股間に向かって、だ。

「あ……」

 翡翠の手が、その中のものの確かめるように俺の股間を撫でている。
 まるで痴漢のような振る舞いだったけども、そもそも翡翠の振る舞いも痴女
じみたものがあった。この廊下のこの時間と空間では、痴態を尽くさねばなら
ぬ何かがあった。

「分かる?翡翠……翡翠の蜜を飲んでたら、俺もこんなに興奮してきたよ」
「志貴さま……では……私で宜しければ志貴さまを鎮めて差し上げることが」
「私で避ければ、なんて謙遜しなくて言い」

 そう言うと、翡翠の肩を抱き寄せる。
 顔と顔、鼻と鼻、目と目、そして唇と唇が接近し、触れ合い――俺は翡翠に
キスをした。目を閉じ、何秒か分からない長いキス。

「は……ぁ……ぁ……」
「翡翠じゃないと駄目だ……翡翠が欲しい、だから……俺のこれを迎え入れて
くれ」

 そう言いながら、俺はズボンのチャックを開け放つ。
 翡翠と違ってパンツの中で鬱屈を溜めていた硬い肉棒が空気に放たれそそり
上がるのが分かる。俺の身体のもっとも凶暴かつもっとも敏感な先端が、翡翠
の前に現れる。

 翡翠の手に、ペニスが触れる。一瞬熱い物を触った反射のように翡翠は腕を
引こうとするけども、すぐに俺の棹をその細い指で撫で、さすってくれる。そ
れだけでも気持ちいいけども、望むのはもっと……もっと翡翠を直に、濃厚に、
むせかえるほどに味わいたい。

「翡翠……俺が翡翠のどこにこれを収めたいか、分かるね?」
「はい……志貴さま」

 こくん、と恥ずかしそうに頷くと翡翠はまたスカートの裾を掴む。
 再び俺の前に、翡翠の濡れた毛のない陰部が晒される。翡翠はスカートの裾
を上手にエプロンの隙間にたくし込むと、背中を窓に預けて脚を開く。

 肩幅ほどの開くと、その脚につれて翡翠の筋が口を開き、中の淫らな襞が息
づいているのが見える。俺がさんざん汚した翡翠の秘華は、オトコを、俺を欲
して疼いているような……そんな気にさせる。

 それだけでは俺が分からないと思ったのか、翡翠は右足を上げていく。
 まるでバレリーナが脚を掲げるように、翡翠の膝は上がる。そうする事で、
翡翠の秘所はますます俺の前に露わになっていく。俺が翡翠のふくらはぎを手
にとって支える。

「翡翠の……翡翠のこの濡れた穴に……志貴さまを満たしてください……」
「翡翠……!」

 俺は翡翠のふくらはぎを肩に担ぐと、そのまま身体を近づける。
 翡翠の身体は横に回転しそうになるけども、それでも俺の肩をに手をあてて
まっすぐ向かい合ったまま、俺と繋がろうと健気なところを見せていて――

 亀頭の敏感な先端に、ぬるりと柔らかな翡翠の襞の寄った入り口が触れる。
 そしてそのまま腰を進め、何度目でもまるで処女のように引き窄まった翡翠
の膣に俺の肉棒を押し込んでいく――沸き上がる、戦慄にも似た絶対的な快感。

「はぁ――ぁぁ!」

 翡翠は目を閉じ、大きく口を開いてその快感の吐息を吐いた。
 俺は翡翠の中を進みながら、頭と頭を近づけ、首を抱く。二人で立ったまま、
繋がって――そのまま行くところまで行こう、と思う。

「翡翠……気持ちいいよ、翡翠は――」
「志貴さま、んぅ、ああ……志貴さまが、私の中を……ああっ、はっ、あー!」

 俺は立ったまま、翡翠の腰を突いた。
 横たわって正常位や側位で繋がるのと異なる、立ったままのセックス。
 まだ明るい中、窓枠に翡翠を押しつけて――それもメイド服のままで、スカー
トだけをめくらせるという破廉恥な情交。

 それが、俺を、狂わせようとする。

「翡翠――翡翠っ、はっ、あっ、あっ……」
「あん……ああっ、志貴さま……いいです、もっと翡翠を中から……ふ、ああ
あ!」

 俺は下から腰をしゃくり上げるように動かす。
 立ったままという不自由な体位なのに、いつもより翡翠の奥に達しているよ
うな気がした。翡翠の中はぎゅぅっと握るように締め付けてきて、奥のこつん
とした子宮口の生硬い感触をなんども亀頭の先端に味わう。
 だが、俺はその先も通れと翡翠を突き上げて――

「はっ、ああ……志貴さまっ……翡翠を……いいっ、ああ……んんぁぁ!」

 間近に聞く、翡翠の熱い嬌声。
 俺はどんどんと煽られるままに進んでいく。翡翠を自分の上に抱きかかえる
ような格好で、何度も何度も翡翠の身体を強く貪って、突いて――俺も限りな
く高まっていった。
 翡翠の身体が熱い。メイド服越しでも肌が熱を帯びて、火照っているのが分
かる。そして汗に混じった牝の香りが何とも言えず……

 駆け上る、俺の根元の欲望。
 それは翡翠の中に白濁液を吐き出し、中から翡翠を汚して印を付け、手に入
れたいと思う本能じみた欲望。でも、それを俺はなにも止める手段も理由もな
くて、ただがむしゃらに、爪先立ちになるほどに。
 翡翠を、俺は、立ちながら犯して――それを翡翠は全身で喜んでいて――

 俺たちは、その瞬間に一つになって、抱き合いながら。

「志貴さまぁ!」
「翡翠っ!」


 ゴキ


 それは、絶頂の音にしてはあまりにも即物的な――背中が腰が――駄目だ。
 何が起こったんだろう、分からない、でも俺はもう吹き出していて、そのま
まねじれるような激痛が背中に――あああああ……

「し、志貴さま?志貴さまぁ!」

 わからない……

             §           §

「……何をやってるんですか、兄さん」

 秋葉の言葉が背中に刺さる。振り返って言い返したくもあるけども、ベッド
の上で俯せになって動けない以上その侮蔑を甘受するしかない。
 俺の腰には七夜さん特製の湿布がべったりと貼られ、その上に氷袋まで乗っ
けられた情けない姿であった。

 つまりは、その――絶頂の瞬間に俺は背中をやってしまってた。
 それから後は何がどうなったんだかよくわからない有様だったけども、最終
的には寝室に運ばれて遠野家の女性陣に見守られるという羽目になっている。

「……いや、その……まぁ」

 まさか秋葉に翡翠と立ったままエッチしてたら腰を壊しました、だなんて言
えない。

「申し訳ありません。私がバランスさえ崩さなければ……」

 秋葉の二歩後ろで、翡翠が恐縮して頭を下げている。
 まぁ、翡翠がバランスを崩して落ちてきたというのは嘘ではないが――まさ
か事の一部始終を説明するわけにも行かないから、咄嗟の口裏合わせは脚立の
上でバランスを崩した翡翠を俺が助けようとして……ということになっていた。

 でも、秋葉はそんな翡翠にも振り向かずに俺の背中に冷たい視線を注いでく
る。
 こっちから見えないけども、俺には分かる。あの目尻がぴくぴくと震える、
怒りを奥歯で噛みしめているような秋葉の視線を。

「翡翠が脚立から落ちるだなんて、今まで聞いた事がありません。そしてその
場に偶然兄さんがいただなんて信じられません。ここから導かれる結論は、兄
さんが翡翠に良からぬ事をしでかしたとしか……」
「…………」

 鋭い、流石に秋葉、我が妹だ。
 でもはっきり言ってそんな感心に浸れなかった。秋葉の鉄の意志と容赦のな
い仮借に掛かれば、俺なんか数分でぴぃぴぃとひな鳥のように歌い出しかねな
い。だが、歌うと死ぬ、というか殺される。そんな未来を予測するのも嫌だっ
た。

「まま、秋葉さま秋葉さま、志貴さんはしばらく安静にしませんといけません
ので」
「七夜、私は名にも兄さんを責めさいなんでいるわけでは」
「だいじょーぶです、志貴さまはきっと後でちゃーんと説明されますから、さ
ささ」

 主治医役の七夜がそんなことを言いながら、秋葉をぐいぐいと扉に向かって
押しやっていく。たいした度胸だった――けども、七夜さんはこういうときに
は妙に押し出せないものがあって、秋葉は苦渋しながらずるずると押し寄せら
れていく。

「兄さん、後でしっかり説明して貰いますからね!」
「秋葉さま、全て私が悪いのです」
「ああもう、翡翠、ちゃんと後で話を聞かせて貰うわ。では兄さん、これ以上
無理をなさいませんように」

 そう、なんとか体裁を繕いながらも秋葉は退場と相成った――トラブルを後
回しにしただけみたいだったけども、七夜さんの押し出しには感謝であった。
 秋葉をドアの向こうに追いやると、はぁ、と図らずも俺と翡翠が安堵の吐息
を漏らす。

「ひーすーいーちゃん?」

 ……一難去ってまた一難、か。
 ゆっくりと背中に触らないように首だけを回すと、翡翠に背中から七夜さん
が抱きついているのが見えた。服装の違う双子の姉妹だけど、似ていて――な
にか違うような。微妙な感じだがするんだけども、
 いや、それよりも七夜さんはむふーと猫口のように笑いながら、つんつんと
翡翠の頬を指で突いている。

「翡翠ちゃん?おねーちゃんだけには事の真相を教えてもらえない?」
「ね、ねねね、姉さん!」
「だってねぇ、どうしてあのとき翡翠ちゃんは窓ふきの雑巾で絨毯を拭いてた
のか、すごくおねーちゃん気になるの」

 ……鋭い。流石翡翠の姉だ。って感心もできない。
 そりゃぁあれですよ、俺が出したのが零れていたから――でも、まだそうな
るとまだ翡翠はショーツも履いてないで、膣の中はべっとり俺の精液で汚れて
いると考えると……

 まずい、立ってきた。
 そしてこの姿勢で勃起するのはつらい、どうにも逃げ場がないぞ、俺様の息
子が下敷きで。

「うううう……」
「姉さん、志貴さまの様子がおかしいです、この場は私が志貴さまの看病を致
します!」
「でも翡翠ちゃん?お医者さんは私なんだけどー」
「いいんです、姉さん、志貴さまのお世話をするのは私のお仕事ですから」
「あーれ、翡翠ちゃんったら強引ー、そんなにらぶらぶなところ見せられると
おねーちゃん嬉しいのか哀しいのか……ううう……」

 嘘泣きする七夜さんを、今度はぐいぐいと翡翠がドアの向こうに追いやって
いく。
 ――完了。これでようやく翡翠と二人きりになれる。今度は翡翠は念入りに
ドアに鍵まで掛けていた……まぁ、どっちかが来ると追求されるわけだから。

「………志貴さま、お加減は如何でしょうか?」
「んぁ、いや、大丈夫だけど……ようやく、ほっとできるな、翡翠」

 首を横に向けて翡翠を見ているが、翡翠がぎゅっと胸元で手を握り、痛々し
そうな瞳で俺を見つめるのが分かる……まぁ、無理もない。
 なにしろ俺は腰痛でひっくり返っているのだ。情けないにも程がある。

「……いや、自業自得だよな。俺があんな事言って翡翠をからかったから」
「でも、その……あのようにしていた私のせいです。志貴さまを惑わす様な事
をしなければ……」

 翡翠が悔いるのも分からなくもないけども……でも、その、ねぇ。

「じゃぁ……もし、俺があのときああい言わなかったら、翡翠はどうしたの?」
「…………」

 つまりは、ショーツも履かないで下の毛を剃毛したつるつるのスカートの中
に隠していて、そのままどうするのかと……でも、それは多かれ少なかれ俺に
分かることなんだし。
 翡翠はまた、真っ赤になって俯いていた。そもそもそんな事をするようにな
った翡翠が――分からない。

 でも、そうなるとあれはまさにグッドタイミングでもあったわけで、その結
果がこの腰のていたらくだとしたら……なんというのか、難しいところだ。

「……こうすれば、志貴さまは喜んで頂けると……その……」
「ま、まさか七夜さんとかに相談した訳じゃ……」
「いえ、志貴さまが……その、ベッドのご様子からない方が良いかと思いまし
て……こういうのはお嫌いでしょうか?」

 いや、俺は背中に堪えないようにゆっくり首を振った。
 むしろそこまで翡翠が気を遣ってくれているというのもありがたいというの
だか、翡翠らしくちょっと行きすぎているというのだか、微妙なところだった。
 
「あー……いや、その、すごく興奮した。だって、廊下でえっちって初めてだ
立ったし」
「それが志貴さまのお好みであれば、これからご期待に添うように……」
「いや、その、それとこれとは別というか……まぁその、何か間違いがない訳
じゃないからショーツは着けた方が良いと思う、うん」

 何か結論というか、説諭というか、えらそうで意味のない事を呻きながら俺
は枕の上に顎を戻した。しかし、このまま腰痛で欠席とか言ったらなんと言わ
れる事やら、シエル先輩や有彦にジジイ呼ばわりされるかと思うと……

「志貴さま……本当に……」

 翡翠の手が、そっと俺の背中に触れる。
 背中を撫でる手は、俺の身体を気にしてかおっかなびっくりだったけども…
…それでも、翡翠に労られているというのはなんとも心の安まる話であった。

「これから完治されるまで、翡翠が精魂込めてお仕え致します」
「いつもいつも済まないなぁ……馬鹿やって、そして翡翠に助けられて……」
「いえ、そんな志貴さまにお仕えするのが私の喜びです」

 そっかぁ……と思う。俺が好きだ、と言う所以外にも翡翠は俺によりどころ
を求めていて……まぁ、でも、今はそんな翡翠に……

「惜しいなぁ。こんな格好だと、翡翠にキスもできないや」

 俺がそんな事を漏らすと……くすり、と翡翠が小さく微笑むのがわかった。
 とりあえず、腰が治ったらこれのお返しに――何をすればいいんだろう?わ
からない、でも、あまり大げさすぎるのもいけないような気がする。

 翡翠が、ベッドの枕元に近づいてくる。
 そして身体を屈めて俺の前髪を上げると、唇が額に――軽くキスをする。お
やすみなさいませ、と翡翠が言うように……

「……こんなキスは、お嫌いですか?志貴さま」
「いや……いい。これから毎晩して欲しいほどに」

 翡翠が恥じらいにしばらく言葉を失う間に、俺は目を閉じる。
 しばらく、当分は――翡翠とこうやって過ごすのも悪くはないな、と思いな
がら。

「それでは……志貴さま……」
「翡翠……」

 俺たちはお互いの名前を呼び合って――
                                      《おしまい》






【あとがき】

「やっぱり納得がいきませんわ兄さんー!」
「翡翠ちゃん!おとなしく出て来てお姉さんに全部ゲロしちゃいなさーい!」
ダンダンダンダンダンダン!


……というわけで、どうもSSのおつき合い頂きまして有難うございます。
今回のSSですが、翡翠でえろで純愛……と言うことを考えていて衝動的に
書けたSSですが、本当に純愛なの?と言われると……お終いの方で純愛
っぽかったと言ってください、お願いです(笑)
 なんというのかえっちなメイドさん翡翠であって純愛翡翠なのか、というの
には首をひねったというか、正直どうするか悩みましたが、みなさまのご感
想をいただけたら、と思います。

 いや、ぱんつなし、お毛なしの翡翠えっちは書いていて萌えましたが(笑)

 でわでわ!!