『いつまでも、傍にいて。』
                    三葉相良


誰も、この部屋にはいなくなった。
翡翠は、秋葉の部屋を掃除しながら、そんなことを考えた。

きちんと整頓されている、秋葉の部屋。
幼い頃から、ずっと一緒だった秋葉。


翡翠は掃除を止めずに、ただひたすらに続けた。
何か意味があるわけではなく、それが翡翠の『仕事』だから。
誰も使っていないから、まったく乱れていないベッドのシーツを、直す。
この場合そういわないのかもしれない。けれど、翡翠にとってはそうだった。

たとえもう、部屋の主がいないくても。

スカートを翻し、部屋のドアを閉める。いつものように、閉める前には一礼。
誰もいない、静かな空間は翡翠にとって心が痛む光景で。

「・・・・・秋葉さま。掃除、終了致しました」

静かにそう告げると、ドアに背を向ける。

心の中では、いつも黒髪のあの人が映っているのに。
今は、もう思い出したくない・・・・・・・・

翡翠は、瞳に浮かぶ、熱いものを堪えた。




++++++++++++++++++++++++++



志貴が学校から帰ってくると、翡翠は買い物へ行っていた。
部屋の机に、小さな置手紙があったから、それでわかった。
細々とした、綺麗な翡翠の字。
どっちかというと、琥珀は丸っこい字だったから、正反対の印象を覚える。
志貴は部屋を出て、琥珀の部屋へ向かった。
・・・少し前は、テレビを見せてもらったりしていたから、ノックをしそうに
なる。
馴染んだ体とは別に、ドアには鍵は付いてなかった。

志貴は知っている。翡翠が、時々この部屋に来ていることを。
いつも普通に振舞っているけれど、何気なく見せる顔が、妙に物悲しい。

「・・・・琥珀さん・・・・翡翠が、寂しがってるよ」

今にでも、冗談だと屈託もなく笑いながら、出てきそうな気がするのに。
しん・・とした部屋は殺風景な空気が漂う。
自分の部屋も殺風景だけれど、まるで匂いが違う。

カタン・・・・

玄関のほうで、音が聞こえる。
翡翠が、帰ってきたんだ。
この部屋にいると知られるのは、あまり良いことではないだろう。
すぐさまドアを閉めて、恋人の元へ向かった。



「翡翠、午後は何をするんだ?」
今日志貴は午前で学校が終わった。だから珍しく、昼食を屋敷で取っている。
「私は庭の掃除をするつもりです」
「そうか。なぁ、俺も手伝っていいか?」
志貴が翡翠に顔を近付けながら聞く。翡翠の顔が、仄かに染まっていく。
「はい。手伝っていただけませんか」
「うん。じゃあ、やるときには声をかけてくれ」
こくん、首を縦に振る翡翠。

大きいテーブルに、たった2人で食事している。本当は、1人のはずだった。
志貴のメイドである翡翠は、最初一緒に食べることを拒んでいた。
しかし、秋葉達がいなくなってからは一緒に食べるようになった。
さすがに、2人しかいない屋敷で、わざわざ1人で食べることもないと思った
のだろう。

二人とも、庭に良い思い出など無かった。あるのは嫌な思い出だけで、思い出
すだけで吐き気がする。
志貴が、死んだ。
それを見ていた翡翠。そのせいで、心にも大きな傷が残っただろう。
そして、琥珀さんまでもが――――――。
琥珀さんが中の掃除をしないで、外の掃除をしているのも、それがあるからだ
ったのかもしれない。
勿論、性格上の問題もあるが。

「志貴さま、お時間は平気でしょうか」
「ああ。平気どころかやることが1つも無くて困っていたんだ。はりきって手
伝わせてもらうよ、翡翠」
「・・・・・・・ありがとうございます」
ふかぶかと礼をしようとする翡翠を止め、ちょっとした散歩気分で、庭を回っ
ていく。
他愛の無い会話。日常的な笑顔。これで十分だった。
お金も、何も要らなかった。彼女さえいればよかった。
逆に、翡翠にとっては、志貴が大きな支えとなっている。

「・・・・・・志貴、さま」
「?なんだい、翡翠」
「ここから・・・先は、いいのですか」
翡翠が立ち止まった先は、ソコで。
いうまでもない。翡翠は少し青ざめてきている。
「翡翠。俺は平気だから、掃除し終わるまで、待っててくれ」
「そんな・・!手伝わせている上に、そんなことはいけません」
けれど、言動とは逆に、箒を持つ手が酷く震えている。

恐怖。

ドクン、ドクン。心臓が高まる。
「翡翠、顔が真っ青だよ。そんな様子で、いかせられないよ」
志貴が近付こうとすると、翡翠はぱっと離れた。
「志貴さまは・・・・・・・平気なのですか・・・・・・・・?」
平気ではなかった。志貴も、この場にいたくなかった。しかし、翡翠を行かせ
ることは出来なかった。
「・・・平気、だよ。だから―――――」
「平気なのですか!?志貴さまは」
突然、声を荒げる翡翠。志貴は、意図が掴めなかった。
「・・・翡翠?」
「忘れて・・・・・・・忘れてしまったというのですか・・・?姉さんや、秋
葉さまのことを・・・・」
はっとした。志貴は、翡翠の言っている意味がようやく解った。
「忘れてなんかいないよ、翡翠」
そう優しく声をかけ、翡翠の腕を握る。翡翠は、抵抗しなかった。
「私・・・・何も出来なかった・・・・」
ぽそり、震える声で言った。
「翡翠?」
「姉さんが・・・!私が志貴さまや、秋葉さまと楽しく過ごしている間、苦し
んでいただなんて・・・!
 双子なのに、気付きもしなかった!」
翡翠の体が震え、志貴にもたれかかる。志貴は何も言えずに黙っていた。
「姉さんは、いつも優しかったから・・・それが姉さんだと思っていたのに。
全然、解ってなかった・・・」
「翡翠が、悪いわけじゃないよ」
「姉さんは、『翡翠』を演じてなんていなかった!いつも笑うあの笑みにも、
姉さんらしさが溢れていたのに・・・」
翡翠は涙を零し、ただひたすら、懺悔する様に続けた。
志貴は、そんな翡翠を抱きしめて、こういった。
「翡翠。琥珀さんには、幸せじゃなかったときがあったと思う。けど、それは
俺たちだって一緒だろう?
 琥珀さんは、翡翠に幸せになって欲しいと願っていたのに、翡翠が泣いてい
たら何もかもお終いだろう?
 翡翠が、忘れなければいいんだ。琥珀さんのことや、秋葉のことを・・・・」
「・・志貴、さま」
「翡翠、自分を責めてばかりじゃ、何も始まらない。今俺たちは、あの二人の
分まで、幸せになることじゃないのか?」
志貴は翡翠の方を支え、真正面に向き合った。
翡翠は涙も拭かずに志貴を見つめ、泣き笑いのように微笑んだ。

「志貴さま・・・・・抱いて、くれますか」
「・・・・あぁ、今日は、離さない」


ざわめく風を感じながら、二人は重なった。
まだ明るい光を上げる外界から姿を消し、薄暗い部屋に入った。



「翡翠を初めて抱いたとき、いったよな。『翡翠が好きだ』って」
「・・・・・・・はい。確かに、いいました・・・」
ベッドの上で、二人は体を寄せ合う。毛布など必要が無い。二人自身の体温で、
もうとろけそうだった。
 
「俺の気持ちは、あれから変わらない。そして、これからも変わらない。翡翠
も、俺を好きでいてくれるか?」
「はい・・・っ私は、志貴様だけを愛します・・・」
それが儀式の始まりだった。優しい口付けをかわし、抱きしめあう。
二人とも相手が欲しくて堪らなかった。はやる気持ちを抑え、口付けを交わす。
舌を絡めあい、もっと近付く。どくんどくんと二人の心音が重なる。
「あっ・・・・・・はァっ・・・」
くちゅ、志貴は翡翠の首筋を舐め、痕を付ける。赤い痕は、まるで具現化した
愛のよう。
「翡翠・・・好きだ・・・」
するすると、メイド服を脱がしてゆく。リボンを解き・・・・・
シンプルな、白いブラジャーが翡翠の胸元に現れる。小さいリボンしか付いて
いないデザインは、翡翠らしい。
それを丁寧に取り、柔らかい翡翠の胸に触れる。
「ぁっ・・・!ひゃぁ、っぅん・・・」
「翡翠・・・柔らかくて気持ち良い」
志貴はそういうと、両手で揉んでいく。翡翠はシーツをつかんでいた手を離し、
志貴の手と重ねる。
「なら・・もっとココで遊んでください・・・・志貴さまの思うがままに・・・」
ごくり、志貴の喉の音が鳴る。
本当は志貴が弄んでいるのだが、どうにも翡翠の白い手があると、まるで自慰
のように見えて。
志貴のそれは強調し始める。それに気付くと、志貴は片手を下半身に近づけて
いく。
右手は翡翠の手と重ねながら胸をもみ、左手を太ももを触っている。
そして、揉んでいないほうの胸の乳首を、舐める。
「やぁ・・っ」
「翡翠、気持ちいい?」
翡翠はかあっと赤くなり、曖昧な態度を見せた。多分、気持ちいいのは確かな
のだが、認めるのが恥ずかしいのだろう。
「ぅっん・・・あぁっ・・」
乳首はどんどん硬くなって、志貴は軽く噛んだ。
「ひぅあぁぁぁぁっ・・・!!」
びくんびくんと体を反り返し、過剰なまでに反応する。
すでに絶頂迎えたようにぐったりしている翡翠のスカートを捲り上げた。翡翠
はぴくっと体を震わせた。
まさに小動物のように脅える様に、快楽に流されまいと唇を噛む。
スカート上からそっち秘部に触れると、翡翠は恥ずかしそうに俯いた。
もう何度もしていることなのに、秘部を触るときだけは、恥ずかしそうで。
その反応が志貴はとても好きで、ひどく甘ったるい感情に溺れる。
「ん・・・んん・・っあぁ・・はァしき・・さま・・ぁっ」
軽く突起を弄ぶと、翡翠は涙を零す。志貴はその様子をじっと見詰める。勿論
手を動かしたまま。
「あぁっ・・・ん、はぁっ・・・」
「翡翠、可愛い」
そういうと、唐突に志貴は下着を下ろした。
「ひゃぁんっ!」
そして右足の足首に軽く引っ掛け、行為を再開する。志貴は翡翠にいった。
「翡翠、足の力抜いて」
「え・・?はい」
いくつもの涙の筋がある頬、紅潮した頬。淫欲に溺れていても、まさに純白の
天使。
翡翠にはシンプルが似合う、と志貴は一番思った。こまこましているのよりも、
シンプルなもの。
勿論、翡翠が大胆な下着などを着ても、それはそれで・・・
志貴はいやらしい妄想から我にかえると、翡翠の両足をつかんだ。
そして、M字にしていく。
「やぁっ!し、しきさまぁ・・・・・」
翡翠は少し足に力を入れたが、だんだんと消え、目を瞑って志貴を見ようとし
なかった。
M字にしたことで、秘部が露になる様を、見られたくなかったのだろう。
その恥ずかしさも快楽のうちとなったのか、秘部からは蜜が溢れ、肌を伝い落
ちる。
「翡翠・・すっごい濡れてるよ。感じてるんだ」
「やぁっ・・・・いわないでっ・・・」
「だってさ、真っ赤になって・・こんなに垂らしちゃっていいのかな。もう欲
しい?」
「違・・違います・・これは・・」
「これは何?じゃあさ、翡翠の意思とはまったく別物なの?」
「・・・・・・・・・」
「ふぅん。じゃあ、証拠見せて」
くちゅ、という音をさせながら、指を差し入れる。くにくにと指を動かして、
浅いところで遊び。
「はぁ・・っあぁん・・あぅ・・・ひゃぁ・・」
空いてる手は、クリトリスを弄ぶ。ぐにぐにと押し潰し、ときには軽く引っ張
った。
勿論、同時進行で。
「あぁっ・・!ひゃぁんっ!ふぁぁっ」
しかし、それ以上は進まない。ある程度の快感では、その『ある程度』までし
か感じられない。

もっと弄くってホシイ。
もっと弄んでホシイ。
もっと・・・

でも、そんないやらしいことを志貴に、しかもご主人様にいえない。勿論自分
はメイドだけれど、志貴と恋人で・・・
それでも仕えている身で、そんなことは・・
「翡翠、もっとホシイ?」
ごくんっ。
喉を鳴らしてしまった。いつもの、あの快感がホシイ。もっと感じたい。
翡翠の心は、乱れた感情で埋め尽くされそうだった。微かな理性の柱が、負け
ないように頑張っている。
志貴も、正直言って限界に近かった。しかし、翡翠にどうしても「ホシイ」と
いって欲しい。
「翡翠のナカぐちょぐちょしてて、こんなんじゃ足りたいだろ。指よりも太い
ので、貫いて欲しいだろ」
志貴の言葉は、翡翠の心を的確に当てている。その誘惑につられる。
「しき・・・・・・さま」
弱弱しく、呼ぶけれど。どうすればいいのか。答えは1つしかない。
「ホシイ・・です・・お願い・・・」
「・・・・・・ふぅん。じゃあ、翡翠のさっきのは本当だったんだ。」
そういうと、志貴は翡翠のそこから指を引き抜き、翡翠に見せた。
「これ、翡翠が俺のが欲しくて出したんだ。こんな、ぐちょぐちょしたのを」
翡翠は真っ赤になって、志貴を直視出来なくなった。それを見て、志貴は翡翠
のクリトリスを勢いよくつねった。
「やぁぁぁぁっ!!ふぁぁんっひゃぁ・・・っあぁん・・・」
「うわ、まだ出てくる。まるで底なし沼みたいだ」
「お願いです・・・しきさま、いれて・・・・っ」
「いいよ。翡翠の為ならね・・・」
ずん。いきなり根元まで入れた感覚に、翡翠は目も眩みそうだった。
痛みはなかった。
ただし、快感は凄まじかった。今まで焦らされていた分、志貴のソレはいとお
しかった。
「あぁっ・・・・・あぁん!っはぁん・・・・・っ!」
「翡翠・・・・っ」
結合部分から、二人の混ざった体液が太股を伝って落ちる。雫が落ちるのにも
ぞくっと感じる。
「ひゃぁあんっ!っぁ!はぁんっ・・あぁぁん!」
力強く差し入れする志貴。その衝撃に身悶えする翡翠。狂っているかのように、
喘ぎ続ける。
「もっ・・・もぉ駄目です・・・・・あっあっ!!」
「俺も・・かも。一緒にいこう翡翠・・」
パン、パン。最後の突き。
「っぁぁん!!ふぁぁんっっ!!」
どくん、志貴のソレは波打ち、翡翠の中に勢いよく出した。
ぐったりと倒れこみ、二人は抱き合いながら、願った。


―――いつまでも、そばにいたい―――


そう思いながら、深く眠りについた・・・・



++後書き++

初参加の三葉 相良と申します。
翡翠は結構書きやすいし、書きたかったのでついつい参加しました。
なんか短めでしかも内容が薄い・・・これはまさに『最悪』の条件がそろって
ますね・・
志貴と翡翠だったらしきを鬼畜にしたくて・・でも純愛なので軽くしてみまし
た。
翡翠中泣かしちゃ可哀想なので。
ここまで読んでくれた方ありがとうございます。
ではでは。また会えることを祈って・・・・

++三葉 相良++