気づいたときは、もう遅い。
 目の前から消える秋葉。それを追いかけるように流れる何か。
 後から知ったのだが、翡翠が彼女をかばい飛び込んできたらしい。

 そして、目の前には鬼。
 シキの姿が飛び込んでくる、間に合わない。

 吹き飛ばされ。
 遠野家の泉に落ちる。

 今は季節の変わり目。
 短い一瞬の秋が終わり、長い寒波の冬が押し寄せる、まさにその間の時期。

 そこはかとなく無責任っぽいシキの声を、沈む中で最後に聞き取る。

「…………オレのせいか?」


『従者献身』

                                                10=8 01


 結局、三日間寝込むこととなった。
 季節の変わり目ということと、泉の水の思わぬ冷たさに完全にやられてしま
ったらしい。一時は熱が40度までに達し、横になりながらも視界が覚束無い
状況にまで陥ってしまったほどである。
 秋葉や翡翠、シキが何度か見舞いに来たが、風邪がうつってはたまらないと、
彼女らの入室は禁じられていた。今の志貴は離れに隔離されているようなもの
だ。

 寝起きの少し呆けた頭で天井を仰ぐ。
 和室の中は薄暗く、外からは人の気配というものを感じさせない程に静まり
返っていた。闇の中に飲み込まれてしまったような静謐。
 ああ、夜なのか。
 と、今の様子をなんとなく悟った。全身に枷をされ、鎖で縛されたように体
中が重く勝手が効かない。それでもなんとかして身体を起こして横手を見やる。
はたして、そこには志貴の予想通り夜の世界が障子越しに広がっていた。
 見えずとも障子一枚程度なら解る。

 夜は人の寝静まる刻だ。
 気配の無い静寂に包まれるのは当然のこと。

 志貴はそんな音も無く広がる夜がなんとなく好きだった。
 特に冬は乾燥した空気が、大気を美しく鮮明に見せてくれるので気に入って
いる。
 それは。
 あの月が綺麗に見えるから。
 だから、この凍りついたような夜を好ましく思える。

 例え人気が無く、一人きりの夜だったとしても。

 だが。
 今日の彼はどうも一人きりというわけではなかった。



 気配のなかったはずの周囲にふと人影が生じる。
 控えめな足音と共に、障子の向こう側の影が月明かりに揺れた。
 音も無く障子が開けられて、冷たい風が流れ込む。
 宵闇を背負い、月明かりを浴びた曲線の持ち主はよく見知った顔、翡翠だ。

「ど、どうしたの?」
「お見舞いに来たの、志貴ちゃん。大丈夫?」

 小首を傾げて尋ねてくる彼女にコクコクと頷いて意思を表示する。満足そう
な笑顔を浮かべた彼女は、障子を閉めて部屋の中へ。
 翡翠の笑顔は、ここ最近において人といえば時南の先生くらいしか会ってい
ない志貴にとって非常にありがたく映る。懐かしい心地よさを感じて、吐息を
一つ。

 見れば、彼女は手ぶらというわけでなくコップや薬、タオルなど様々なもの
が乗せられた大きなトレイを持ってきたようであった。
 どうやら、本当にお見舞いに来てくれたらしい。
 その行為がなんとなく気恥ずかしくなって志貴は俯く。

「どうしたの志貴ちゃん? 熱があるの? 顔、真っ赤だよ」
「……な、なんでもないっ!」
「なんでもなくないよ……顔、凄く赤いよ。ちょっと、ゴメンね」

 抗議する暇も与えずに、こちらの前髪を上げて額に手を当ててくる。翡翠は
己のそれと比較してみるが、よく解らないのか、得心がいかない様子だった。
 それもそうだ、気恥ずかしくて赤面しているのだから熱があるはずもない。
 だがそんなことなど知る由も無く、翡翠は無防備にも自らのおでこをこちら
の額に押し当ててきた。
 触れ合う、額と額。
 視界が急激に狭まり、翡翠の顔だけで埋め尽くされる。風が吹いたのでもな
いのに鼻腔を柔らかな匂いがくすぐった。暖かい吐息と共に、それは志貴の脳
内を激しく揺さぶる。ただでさえ、風邪を引いているというのに追い討ちを喰
らっているような感覚だこれは。

「んー、熱はないみたい……」

 未だ顔を近づけたまま、どうしたものか、と翡翠が思案の表情を浮かべる。
こうして、急接近していると普段は見えないものまで見えてしまっているよう
な、不思議な感覚に囚われてしまう。

 視線を頬から外し、瞳へ。だが瞳へ向かうその途中、彼女の鼻が小さくヒク
ついているのを捉える。思わず同じように、こちらも何かを嗅ごうとするが、
別段これといって何もおかしな匂いは感じなかった。

「志貴ちゃん、お風呂入った?」
「……え?」
「お・ふ・ろ。なんか、汗っぽい匂いするよ」

 入浴は時南の先生からは禁止されていた。身体を暖かいタオルで拭く程度に
しておくように、と言いながら特徴的な口ひげを弄る姿を思い出す。
 その旨を彼女に伝え、思い至る。なるほど、確かに今は寝起きで身体は発汗
でびっしょりと濡れてしまっている。この汗のことを翡翠は言っていたのか。

「志貴ちゃん、服を脱いで」
「え、ええ?」
「汗、ふけないでしょ」
「………う、うん」

 言われて納得。突然に脱衣するように宣告されて、少し考えが鈍ってしまっ
ていたようだ。看護に来た彼女からすれば当然のことだろう。
 翡翠の言葉のままに服を脱ぐ、その上半身は傷一つ無く、陶磁器めいた美し
さを持っていた。女性の曲線とはまた異なった滑らかさ。発展途上の肉体なが
ら、十分に息を飲む美しさを持っている。
 その肌にそっとタオルを押し当てた。だが、蒸してあったのか予想以上の熱
痛が肌を荒く引っ掻く。

「―――熱っ」
「あ、ごめんねっ。志貴ちゃん、ヤケドしてない?」
「う、うん」

 俯きながら、なんとか頷く志貴。無性に恥ずかしくなって、頬が赤らんでい
くのを止められない。
 背中を擦る力加減は控えめだったが、それでも垢や汗がタオルにたくさん付
着してゆく。黙々と作業をこなしていた翡翠だったが、それを見て感心したよ
うな声。

「凄い、こんなに垢が出てるよ」
「しょうがないよ……お風呂、ダメだって時南先生が言うし」
「ま、風邪だからしょうがないよね。でも……すごい匂い……くさぃ」

 臭い、とストレートに言われて志貴はさらに俯いてしまう。そんな彼に翡翠
は軽く笑いかけると、その顔を志貴の背中にうずめるように近づける。

「でも―――志貴ちゃんの匂いがする」
「んっ!」

 背中の筋。背骨の部分を軽くくすぐる様な吐息。
 くんくん、と動物のように汗の匂いを嗅ぐ翡翠の鼻息が肌を小さく撫でてゆ
く。

「ん、志貴ちゃん、汗の匂いする。すごぃ、すごぃよ」
「んぁっ、な、なんか、やだよ。匂い、臭いってばっ」

 抗議の声が耳に入らないのか、翡翠は後ろから抱き寄せるように志貴の脇の
下へと手を伸ばしてくる。少し熱の引いたタオルがそのまま胸やお腹を擦るよ
うに動かされた。
 翡翠の二の腕が脇の下をくすぐるように微妙な上下。ぷにぷにとした柔らか
い肌が敏感な脇をに触れる感覚は少年にとって身を捩じらせるには十分すぎる。

「ふぁっ、ひす―――っん、くすぐったいよぉっ」
「志貴ちゃん。動いちゃダメでしょ、しっかり拭いてあげるから」

 翡翠が脇の力をキュッと締める。後ろから抱きしめられた体勢なので、それ
だけで志貴の動きは縛されてしまう。
 背中越しに感じる柔らかい感触。まだ膨らみもないのに、志貴はそこが弾力
性を持ち、たわんで押し付けられたような錯覚に陥る。

「あっ、や……ねえ、もういいでしょ?」
「まだ、途中だから……志貴ちゃん」
「ん? な、なに?」
「タオルで拭いた後でも分かるよ……志貴ちゃんの匂い」

 軽く告げ、少女は少年の首筋に顔をうずめた。柔らかな二人の髪が擦れあい、
耳元で互いが引っ掻きあうようなサラサラとした音色を小さく奏でる。

「ひゃぁっ! ひ、ひすいっ、ちゃん……ダメ、ダメだよぅ。なんか、ヘンだ
ってば」
「志貴ちゃん……とってもいい匂いする」

 翡翠の鼻が志貴の首筋と接する。ヒクヒクとした鼻腔の動きが、柔らかな少
年の首にこまやかな刺激。
 さらに翡翠の。
 軽い弾力性のある、幼い蕾を思わせるそれ―――翡翠の口唇が、つぅ、と触
れる。
 さすがにたまらなくなって、少年は身を震わせる。だが不思議と背筋からは
心地悪さは感じず、むしろ刺激的であった。
 ちゅ、という軽い音。

「ん、ちゅぅ……んぁ、志貴ちゃんの……はぁ……あむ、おいひい」
「うぁぁぅぅ、やっぱダメだよ、なんか、なんか、あぅっ」

 唇を押し当てるだけでなく、それを広げて味わうように上下の唇を動かす翡
翠。首筋の肌肉が彼女の唇に集められてついばまれる。時に、吸い上げたり、
舌を小さく出して味わうように這わせたりして首筋を思うがままに舐る。
 拭き終わったはずのそこは翡翠の唾液でびちょびちょになっており、一筋の
雫が首筋から胸元へと流れ落ちてゆく。

 そして唇は唇へと。
 志貴の口内からだらしなく零れた唾液を舐め取るように触れ合う。同時に、
軽い音を立ててくちづけ。潤んだ翡翠の瞳と同じように、潤いを持った唾液が
志貴の口内へ。
 なぜか、ひどく甘い蜜を喉に通したような錯覚を感じる。

 上気したような少年の吐息。
 それをすぐ横で感じながら、翡翠はその手を下半身へと伸ばしてゆく。
 弾かれたように身震いする少年。湿っていながらも慌てた声が吐息に混じる。

「ふぇっ!? だ、だめだめだめっ! そこはダメだってばぁ」
「何を恥ずかしがっているの、志貴ちゃん? ほら、下もわたしが拭いてあげ
る」
「だ、ダメなの? 脱がないと駄目なの? な、なんかヘンじゃない?」
「ねえ、志貴ちゃん」

 ふ、と翡翠の表情が真剣なものに変化する。すぐ横にあるその瞳は真摯なが
らも、とろんと瞼が下がっており蕩けるように潤んでいた。
 切実な色香。

「わたしね……志貴ちゃんにひどいことしちゃったから」
「え……ひどい……こと?」
「うん。わたしのせいで、志貴ちゃん風邪ひいちゃったし……」

 背中からしなだれかかって翡翠は告げる。
 しかし、どういうことだろう。翡翠のせいで自分が風邪を引いたとは。風邪
をひいたのはこちらの油断からシキに吹き飛ばされただけだし、翡翠はむしろ
秋葉を守ったではないか。彼女が責められる理由など何一つ思い浮かばない。
 原因はこちらの不注意からの落ち度のように思える。

「そん、な。ひすい―――っん! は、何もしてない」
「ううん。志貴ちゃん……わたしが飛び出したから泉に落ちちゃったし」
「え、でも、それ……っは!」

 翡翠のせいではない。だが彼女はそのことに対してひどく罪悪感を抱いてい
るようであった。それがこの過剰に献身的な態度につながっているようだ。
 横を見つめる。
 翡翠の瞳は蕩けて、首筋をくすぐる吐息は甘い。誘うような甘さではなく、
こちらが甘さに酔わせてしまったような感じ。
 志貴は軽く瞳を伏せ、ゆっくりと緩やかな吐息。朱を含む頬、ひどく渇いた
喉と唇、震える声と緊張に硬くなる身体。

「わ、わかったよ……でも、その……や、やさしく、してね」
「うん………わ、わかった」

 何だか場違いなことを言っているなぁ、と志貴は思いつつも手を放し、その
身を翡翠へと預ける。少年の重みを胸に受けた少女は、大きく口の中の唾を嚥
下。
 そっと下の衣服を脱がしにかかる。下着も一緒に脱がしたために、ほどなく
して少女の視界に少年の幼い男性器が飛び込む。

 ほぅ、とした感心するような魅せられるような判断のつかない吐息が耳元に。
 すぐ隣からの嚥下の音が耳朶を打つ。
 見られている。
 同年代の女の子に見られている。
 それも相手はいつも遊んでいる翡翠だ。
 近しい存在の少女に自らの恥ずかしい部分を視姦されているという羞恥心が、
志貴の背筋を熱く焦がしてゆく。

「あ、あんまり見ないでよぉ………は、はずかしぃ」
「う、うん……じゃ、じゃあ……拭くね」

 布団の上に投げ出されたように広がる志貴の脚。右左と順番にタオルで拭い
てゆく。
 足の指先もその間までしっかりと擦ってやる。背筋を軽く反り返らせる志貴
の反応。
 緊張しているのか、硬く強張ったふとももがピクピクと小さく震える。

 翡翠の視線は志貴の性器に注がれていた。
 自分で言い出したこととはいえ、やはり男性器を見ることに緊張しているよ
うで動きがどこかぎこちない。
 両腿を押し開くように翡翠の腕が割り入れられた。暖かいタオルの感触、そ
してその向こう側の翡翠の指の動きが志貴の下腹部を捕らえる。

「はぅっ! ぁぅんっ」
「大丈夫、志貴ちゃん?」
「う、うん……ちょっと、びっくりしただけだから……」

 頷く翡翠。すぐ横に少し呆けていながらも、真摯な瞳の少女がいることを強
く意識してしまって、さらに頬を染めた。
 そして、翡翠の手が唐突に股間を―――握る。

「ひゃぁっ、あうっ、あああ、ひ、ひすっ、ひすっ」
「志貴ちゃん」
「ななんあんあなな、ななな何をっ」

 男性の中でも最も敏感な部分から伝わってくる感触は暖かく、ぷにっとした
柔らかさを携えていた。滑らかな曲線が股間をまさぐる。
 この感触は布の持つ感触ではない。
 はぁ、という吐息。
 飲み込む唾液。
 全ての感覚が敏感になった中で、その下腹部に触れるそれは間違いなく翡翠
の手の平であった。直接、こちらの股間を触っている。握っている。

「ど、どうして、こ、こんなっ」
「志貴ちゃん。今の志貴ちゃんはね、熱があるから汗をかかないといけないの」
「そ、それはわかるけど」
「だから、お手伝いしてあげるね」

 してあげるね、と言わても志貴にとってはどう答えていいものか分からず、
ただただ返事に窮するばかりであった。
 それを無言の肯定と受け取ったのか、翡翠の指が動き出す。

「ふぁっ、あ、あっ、なんか、駄目だって……ぁっ」
「志貴ちゃん……いっぱい、いっぱい出してね」
「だ、出すって……」
「……汗を」

 汗どころか喉もカラカラに渇いてしまい、水分など一滴も出そうもなかった。
それでも少年の口から搾り出される声は潤いを含んだ様。
 まだ成長途中の志貴のペニス。それを手の平に収めて、撫で回す。小動物を
愛しげに撫でるような手つきに反応してしまい、股間の分身は今にも暴れだし
そうなほどにビクビクと体積を増してゆく。

「志貴ちゃんのココ……すごぃ、びくんびくんって……」
「あぅぅ、い、言わないでぇ」

 サイズと硬度を確認するかのように、志貴の股間をまさぐる。その曲線にそ
うように指がしごかれる。
 未知の感覚に少年は荒く息を吐きそこから逃れようとするが、力の入らない
身体を後ろから抱きかかえられては、動くことすらもままならない。
 股間の隆起は翡翠がしごくと比例するように大きくなってゆく。彼女の手の
中で我慢できないとばかりにペニスが奮え、少女の指を軽く弾いた。

「うわぁ……すごい、志貴ちゃんの……おちんちん、こんなに硬くなって」
「はぁ、はぁ……あぅっん」
「熱くて……おっきぃ……」
「ぅぅぅ、恥ずかしぃ、よぉ……」

 ペニスの先端から、つぷ、と透明の雫が零れ、翡翠の白い指を湿らせる。彼
女はそれにもかかわらず一生懸命に股間をしごき続けていた。先端からしだ垂
れる液体は留まろうとはせず、むしろ搾り出されるように屹立した股間を伝い、
翡翠の手を穢す。
 手についたそれに興味を持ったのか、その手を顔まで近づけ匂いを嗅ぐ。
 すぐ横で翡翠の鼻がヒクヒク動いている。
 そこには自らの先走り液で汚れた翡翠の手と、その匂いを確認する彼女。
 それを。

「………ちゃぷ」

 穢れた液で濡れる指をためらい無く舐めた。
 舌で舐めるというよりも、唇で咥えて啜ったと言った方が適切か、音を立て
てすするその様子をただただ驚いた表情で横目にする志貴。
 少女が口内に溜まったものを飲み込む。
 喉元が、上へ、下へ、嚥下の動作。

「ひ、ひすい?」
「志貴ちゃん……」
「ど、どうしたの?」
「汗……かいているね」

 言われて気づく。搾り取られたような喉の渇きは未だ続いていたが、それで
も汗だけはしっかりと出ているようだ。じっとりとした湿り気が布団に吸い込
まれてゆく。

「んぁ……も、もういいよね、もう終わったよね?」
「もっと……汗、かかないと。早く治らないよ」
「で、でもっ、その、これって、なんか違うよっ」
「大丈夫だから……志貴ちゃん、ね?」

 小首をかしげる翡翠の顔。すぐ横に広がるそれに魅入られたように意識が遠
のく。
 口では抗している志貴だったが、その刺激や溶けてしまいそうなほどの感覚
に酔いを感じているのもまた事実であった。
 喉に残った唾液を搾り出すように口内に含む。
 そして、肯定の頷きとともに短く一言。

「う……うん、お願い、ひすい」

 志貴の意思を確認すると、翡翠の細い指が勃起したそれに指を添える。押さ
えられていながらもそこは、びくんびくん、と脈打つように震えていた。翡翠
の唇が、躊躇無く、そこへと運ばれる。
 ―――ちゅぷ。
 軽い、湿り気の混じった音。まだ少年の幼いペニスが少女の小さな唇によっ
て唾液の潤いを与えられてゆく。
 翡翠が唇を離すと、その小さいながらも懸命に屹立する股間は水飴でも塗り
たくられたかのような艶を見せていた。実際は水飴のような滑りは無いのだが、
猛る尖塔をつたい落ちる唾液は何かの蜜のような滑りを魅せているようだ。

「あぅんっ! ひ、ひすいっ、ふぁ、ふっぁぁ」
「ん、ちゅ、ちゅぷ……志貴ちゃん……おっきぃ……あむ」

 穢れを知らないような可憐な唇を開いて、少女は未成熟な硬い果肉を頬張る。
だが、いくら成長途中とはいっても勃起した肉棒は少女の口内にはサイズが大
きい。全てを口に含もうとはせずに、はむ、と甘噛みするように舐めしゃぶる。
 縦方向だけではなく、横笛のように肉茎を咥え淫靡に濡れた音を立ててペニ
スを味わう。

 自らの吐液と翡翠の吐液でぬめる尿道口に、彼女が軽い吐息をかけた。意識
してのことではなかったのだろうが、筆先で撫でられたような感覚に少年はヒ
クッと身体を震わせる。
 そんな少年の反応が面白かったのか、言葉も無く少女は微笑む。

「……んぁ、志貴…ちゃん、かわぃぃ」
「ひゃぅ、あ、あぅぅ、んっ、やぁぁ」

 少女の献身的とも言える丁寧な愛撫に、少年の喉から嬌声が搾り出されてゆ
く。声変わりを迎えていない喉からは、幼い女声ともとれるような可愛らしい
喘ぎ。
 翡翠の方は最初こそ志貴の屹立するモノを見て気おされている感はあったが、
今では積極的に舌を転がし、まだ青い性器を刺激してゆく。

 小さな唇から可愛らしい舌。
 それが鎌首をもたげるように志貴のペニスに這わせられる。勃起の根元から
裏筋を通り亀頭へと舌を舐め上げ、包皮の周りを転がす動き。

「ふぁっ、はぁ、はぁ……んぁぅ……ひゃっ、ひゃぁぁ」

 最早、声を押し殺すことなど思い浮かばないほどに昂った感情。それを反映
したのか、股間のペニスは破裂しそうなほどにいきり立ち、ねぶり上げてくる
翡翠の舌に鈴口から溢れ出す腺液が伝い零れる。それと唾液とで、翡翠の唇や
舌は油を塗ったように淫靡な光沢を見せていた。

 ちゃぷ、ぴちゃり……れろ……

 舌が動くたびに、ひく、唇で股間にくちづけするたびに、ひく、翡翠の鼻先
が小さく動いて鼻息がペニスの先端にかかる。
 どんな匂いを彼女は嗅いでいるのだろう。
 やはり臭いのだろうか。
 だが、例えそうだとしても今の翡翠の表情は蜜に酔ったかのように蕩けて、
顔も朱色を強くしていた。

「んん……志貴ちゃんの、匂い……あむ……」

 翡翠は志貴の股間の先を念入りに舐め始めた。匂いを自らの舌で拭おうとし
ているのか、はたまた自らの匂いをマーキングしているのか。仔猫が子猫をい
とおしむ様に舌が動き、それに合わせて濡音が、ぴちゃぴちゃと鳴り響く。志
貴の股間を淫猥な楽器に仕立て上げたかのように、翡翠が音を奏でる。

「んっぁ! はぅん、はぁ……あふぅ」
「志貴ちゃんっ、志貴ちゃんっ、あぅ、ぅんっ、ふぁ」

 翡翠の指が志貴の股間に絡まり、両者の液でぬめるそこをしごき始める。上
下に滑るようにシャフトを撫でる指先。その一本、一本、それぞれの五指が粘
液と絡み合って新たな刺激を志貴に与える。
 肉棒を舐める様はまるで小動物のように、愛らしく、浅ましい。
 志貴の動機が加速度的に高まる。

 背筋から鋭い痺れが駆け抜けるような感覚。
 まだ幼い志貴にとってその感覚はほとんど未知に近いものであった。股間の
こわばりがわななき、自らの理性を引き剥がしていく。

 志貴の苦しげな喘ぎが和室に大きく響く。
 何かが自分の中で弾けてしまいそうな感覚に少年は喘ぎを強くする。それを
開放してしまえば楽になると分かってはいても、目の前の少女の純に潤んだ瞳
がこちらを見上げているのを見て、その込みあがる何かを開放することに躊躇
いを覚えていた。
 ここで解き放ってしまったら、何か大変なことになってしまうのではないか。
 少年は幼心ながらに、そのことを解していた。

 だが。
 それを押さえつけることは少年にはできない。ただ、破裂を待つ快感に抗い
続けるだけである。抗っても、翡翠の上目遣いがこちらを捉えている。その熱
っぽく、甘い表情を見た瞬間に、少年の脆い屹立はあっという間に限界まで追
い込まれた。

「うぁっ、あう、ひゃぁ! ひすいっ、ひすいっ、なんか、もう、だめっ、だ
めっ!」
「ふぇ? 志貴ちゃ―――」
「ゴメンね……ゴメンね、ひすいっ、んぁ!」
「きゃぁっ!」

 力み返ったペニスが翡翠の指の中で大きく暴れた。その勢いは強く、少女の
指を弾くほどであった、熱い奔流を唇や舌で押さえきれなかった翡翠が、小さ
く悲鳴を上げる。
 びくんっ、と撥ねた肉茎は先端の尿道口から立て続けに白い精液をほとばし
らせた。
 脈打ち、弾け、白濁した飛沫が翡翠の顔にかかってゆく。
 端整で可愛らしい顔に叩きつけられる粘液質の欲望。間をおかずに、次のほ
とばしりが降り注ぎ、頬、髪の毛、おでこ、唇、舌、口内、顎、様々な箇所を
穢してゆく。汚してゆく。志貴の匂いを染みつけてゆく。

「んぁ……すごぃ……志貴ちゃん、いっぱいでたねぇ……」

 精液にまみれた顔で見上げる翡翠。
 とろり、と輪郭を伝い零れ落ちる白濁の液。

 それを視界いっぱいに焼き付けた志貴は、胸の内からこみ上げてくる感情に
震えた。
 何か。
 自分はとんでもないことをしてしまったのではないだろうか。
 禁忌を犯してしまったかのような背徳的な感情が胸を掻き毟り、志貴にひど
い罪悪感を圧し掛からせる。

「う、うぅぅ……ぁぁぁ、ふ、ふ、ふぇぇぇん……えぐっ」
「し、志貴ちゃん!?」
「ごめ、うっ、ぅぇぇぇ、ごめんなさい……ごめんなさいぃ」

 とうとう泣き出してしまう志貴。
 その姿に面食らってしまった翡翠だったが、しばらくして優しい笑顔を見せ
る。少年の頭に手を置き、軽く撫でてやった。それに合わせて、泣き声も収束
してゆく。

「大丈夫だよ……志貴ちゃん」
「で、でも……きたないよぉ……」

 泣きじゃくる志貴の顔に微笑を一つ。
 そして一言、

「大丈夫―――志貴ちゃんのだから……ずっ、じゅ、おいしいよ」

 安心させるように精液でべとついた指を舐め上げた。
 呆けたように志貴はコクコクと頷くと、その身体を布団の上に沈める。

 ひどく眠い。
 体中の生気を搾り取ってしまったかのような感覚だ。
 落ちてゆく感覚の中で何かが聞こえる。

「志貴ちゃんっ、汗びっしょりだよ」

 え?
 ああ、そういえば寝苦しい。
 翡翠に拭いて貰ったのに汗をかいていたのか、なんだか悪いな。

「何言っているの。志貴ちゃん……拭いてあげるって言ったでしょ」

 そうだっけね。
 駄目だなあ……そんなことも忘れてる。

「いいから、志貴ちゃんは……ゆっくり、休んでてね。わたしのチカラですぐ
によくなるから?」

 チカラ?
 それって、いったい………

「――――志貴ちゃん」

 え、何?

「おやすみ、大好きだよ……」

 うん―――僕も。


 一つ頷き、少年は眠りについた。
 ふと、閉じた瞼に明かりが燈る。それは月の明かりだろうか。
 それとも。
 彼女の暖かい笑顔だろうか。




 一つ唸り、志貴は眠りから覚めた。
 ふと、開けた瞳に明かりが燈る。それは月の明かりだった。
 そして。
 横を見やれば、彼女は穏やかな寝息を立ててベッドの上にもたれ掛かってい
る。

 メイド服を着た少女―――翡翠だ。
 風邪をひいた自分のために、夜を徹して看病してくれたらしい。
 その献身には頭が下がる。

 メイド服の着衣のはだけている部分を直してやった。
 さすがに無理をさせすぎただろうか。
 いくら、感応者だからといっても風邪の治療で行為をしてしまうというのは、
ちょっと献身的すぎるかもしれない。
 それに応える自分も自分だが。

 志貴は浮かぶ月の様に穏やかに微笑んだ。
 心地好さそうな表情で眠る翡翠を撫でてやりながら一言。

「おやすみ、大好きだよ………」

 寝顔で彼女は微笑み。


 はい―――私も。


                <「Nurse Maid Hisui-chan.」・the happy end.>




「後書−俗に言う、往生際の悪い言い訳−」

 翡翠SSを書くにあたって。
 今回の作品は「秋葉でロリやったし、翡翠でもやりましょっか」という安易
な考えでこの作品が生まれてしまったことを、ここに謝罪します。
 何でか、気づけばショタ志貴を責めるような展開の話に変貌していました。
 何故でしょうか。わかりません。
 ただ、当時の翡翠は元気っ娘だったっぽいので積極的な性格にしてみたり。
積極的にも程がある、という大事な教訓を学びました、自分。

 また、翡翠を書く企画なのにメイド服がさっぱり出てきませんね………重ね
重ね、謝罪すべきことです。申し訳ございません。

 しかし、純愛企画なのに志貴を泣かせたりとか大丈夫なのでしょうか、自分。
 今回のレギュレーションを見る限りは「翡翠の純愛」「純愛な翡翠」と書い
てあるので、翡翠が純愛だと感じていれば、まあOKか、などと考えて勢い任
せ。

 相変わらずの長さだけはどうしようもないのでしょうかねぇ、自分。
 もっと、読みやすいSSを目指して頑張っていきたいと思います。

 まあ要は。
 頑張ったけど―――駄目だったみたいです(苦笑)
 と、いうことで。

 SSを最後まで読んでくださった全ての方々に感謝し、御礼を述べながら後
書を終わらせたいと思います。ありがとうございました。

 それでは
 10=8 01でした。

       BGM:Funny Bunny(the pillows)