「んっ、あー……はぁっ……志貴のが、中にいっぱい出てる……」

背中から愛してよ

                            阿羅本

 志貴の身体の下のアルクェイドが耳元に囁く。寝台と志貴の身体の間にある、
白い肢体。その肌は透明感すら感じるほど白く、すらりとした脚は志貴の逞し
い腰に絡みついている。

 志貴はアルクェイドの首筋に顔を当て、頬と胸でアルクェイドの熱い体を感
じている――自分の腕の中に居るのは人間ですらない吸血鬼の真祖だというの
に、なぜ、こんなに愛しく、人より熱い肌をしているのか――そんなことが頭
の中を過ぎるが、腰の当たりからびくり、びくりと沸き上がる快感の中で、そ
んなことはどうでも良くなる
 
 アルクェイドは志貴の背中にぎゅっと腕を回し、背中の後ろでその腕を握り
しめ志貴の身体を自分の細い身体に密着させる。繋がっている二人の身体は、
同じようにびくり、びくりと動き、行為の後の荒い息が、二つ混じって部屋の
中に響き渡る。

 はー、はー、はー、はー
 はぁー、はぁー、はぁーはぁー

「アルクェイド……アルクェイド……」
「ん、志貴……いい……幸せだよ……こんなに、志貴のことを側で感じられる
んだから」

 アルクェイドと志貴は、お互いの耳元に囁き会う。肌を伝う汗が混じり合い、
体温すら共有しているような感覚が走る。やがて、志貴の脈動が止み、アルクェ
イドの荒い息もだんだん治まってくる。
 アルクェイドの身体の上にのし掛かるような体勢であった志貴だが、自分が
アルクェイドの身体を荒々しくベッドに押しつけていたことに気が付く。

「あ、アルクェイド……重かったか?」
「ううん。志貴、お願い。動かないで……こうしていたいの、ずっと」

 涙混じりのアルクェイドの声。長い孤独と寂寞の中で他人を知ることの無か
ったアルクェイドの、これが愛情表現であった――まるで、千二百年の失われ
た時間を埋めようかとするように、志貴の身体にぎゅっとすがってくる。

 まるで、志貴の体温で己の中にある千年の昔の孤独の氷を溶かそうとするか
のような強いアルクェイドの求め方。

 志貴はほんの少し顔を浮かせて、アルクェイドの表情を伺う。紅い目は涙に
潤み、目尻を涙が伝って金の軽い髪の中に消えて行く。細い顎の線、見事な鼻
梁の線、それは画工がこの世の中に刻もうとした美の結晶のような美しい貌。
志貴はいつも、自分の腕の中に居るのは一つの奇跡ではないかとも思う。

 そんなアルクェイドは、志貴と肌を重ねるたびに泣いていた。こうやって人
の肌の暖かさを知ることがなかった過去の自分の姿を哀れむかのような、声の
ない涙。志貴に抱かれ、激しく突き上げられ、中に放たれる時、アルクェイド
はいつも泣いていた。それは歓喜の涙なのか、あるいはいずれ来る永遠の別れ
を予期しての悲しみなのか――志貴には分からなかった。

 そんなアルクェイドの顔を見ていると、志貴は切なさに胸を締め付けられる
様な思いに捕らわれる。不安にも似たその感情が胸の底に疼くたびに、志貴は
無意識でアルクェイドの唇を求める。唇を唇で割り、舌で舌を絡ませ、お互い
の口腔を貪ることで心の中の欠けたなにかを取り戻そうとするかのように――

 ぷは、とアルクェイドが頭を動かして僅かに空気を求める。そして、アルクェ
イドは自分が志貴の腰に脚を巻き付けたままで、まだ自分の中にある志貴の男
性が、だんだん猛りをうしなって来ているのを感じると、にっこり笑って自分
の涙を拭う。

「あ、志貴……ごめん、脚、離すね」
「いいのか?アルクェイド?」
「うん、志貴もちいちゃくなってきちゃったね」

 そう言われると、今度は志貴がぽっと顔を紅くする。アルクェイドが脚を離
すと、志貴の腰がアルクェイドの腰から離れる。アルクェイドの中から志貴の
男性自身が、二人の液をまとわりつかせながらぬぽり、と抜ける。

 ベッドの上に立て膝を付くようにして身体を起こしている志貴を、アルクェ
イドは柔らかい笑顔で見つめる。自分の愛しい人の姿を確認し、離れた体温の
名残惜しさをほんの少し惜しむ顔――そして、堅さを失った志貴の腰の逸物に
目をちらと向けて、志貴と同じように顔を赤らめる。

「あ、志貴……キレイにしてあげるね」
「無理しなくていいよ、アルクェイド……」
「ううん。おねがい、させて?」

 そう言うとアルクェイドはしなやかな身体を曲げ、サイドテーブルの上の落
とし紙を手に取り、志貴の腰の元に跪くようにして、愛しげに志貴の股間の汚
れを拭っていく。アルクェイドの手の感覚を感じて志貴は、そんな彼女の頭に
ぽんぽんと手を当てる。

「有り難う、アルクェイド……じゃ、お返し」
「え?志貴……きゃっ」

 志貴がにわかに身を翻し、アルクェイドの身をぽすん、とベッドの中に押し
倒す。そうしてアルクェイドの脚の間に割って入ろうとすると、身を翻して逃
げようとする。そうして、志貴に背を向けてお尻を突き出すような恰好で、ア
ルクェイドは志貴に捕まってしまう。

「捕まえた。アルクェイド、動かないで」
「そんな、志貴……きゃうっ」

 志貴の手が落とし紙を取り、前から後ろにアルクェイドの股間を拭き上げる
と彼女の腰がぴくんぴくん、と可愛らしく動く。志貴の指が花びらの上をなぞ
るたびに、アルクェイドは顔を枕におしつけて、小さな喘ぎ声を上げる。

「……はずかしいよ、志貴……」

 そんなアルクェイドの喉の奥から漏れる甘い声が、志貴の中の官能を刺激す
る。目の前で腰を持ち上げ、恥ずかしい所を後ろから志貴に見せるような恰好
になってしまっているアルクェイドの姿も相まって、志貴はアルクェイドの股
間を拭き上げる作業にのめり込んでしまう。

 志貴の目の前に広がるのは、薄いピンク色のアルクェイドの花弁と、それを
後ろに昇っていく会陰部の柔らかな肉と、腰を上げてしまっているためにはし
たなくも志貴の目の前に晒された、小さい桃色の窄まり。志貴の指がアルクェ
イドの花弁の外の肉を割り、中から粘液をふき取ろうとうごめき、そのたびに
お尻の肉がひくひく動く様を目にしていたが、ふとしたことで、ある部分から
志貴は目が離せなくなってしまった。

 それは、アルクェイドのお尻の穴――アヌスであった。豊満なお尻の肉の中
に慎ましやかに潜む桃色の菊座をじっと志貴は眺めていたが、やがてたまらな
くなったように、指を伸ばしてアルクェイドのアナルにちょん、と指を触れる。

「きゃうっ!し、志貴っ!そこは……」
「そういえば、アルクェイド……お尻の穴あるんだな、お前……」

 片腕でアルクェイドの腰を抱き、もう片方の腕の指でくにくにとアナルを弄
ぶ志貴がそう、なにかを思いついたかのような口調でそう言う。お尻の窄まり
の上に指を置き、ずらすように動かすとそれに連れてアルクェイドの腰も震え
出す。

「志貴、そんな……私にもあるわよ、お尻ぐらい……」
「でも……お前、ここ、出すのに使っているのか?」

 自分でそんなことを意識せずに口に出しながら、志貴はぼんやりと考える。

 そう言えば、アルクェイドがお手洗いに行ったという記憶がつきあい始めて
からと言う物、全くない。志貴が中座することはあってもアルクェイドと一日
中過ごして、彼女がトイレに入る光景というのは見たことがない。

 それは、アルクェイドが吸血鬼だから――それも真祖という、龍脈から精気
を吸い上げて生きる存在だから、食事を摂る必要は元からない。故に出す必要
もないのだろう。実際、志貴と付き合って一緒に食事をする事はあっても、そ
れをどこかに出している様な素振りが全くない。

 じゃぁ……何のためにアルクェイドのお尻の穴が付いているのか?――と思
わず疑問を感じてしまう志貴であった。

「使ってるって、志貴……そんな、恥ずかしいよ……」
「ふーん、じゃ、アルクェイドって……したことないのか?」

 思わずそんなことを口走ってしまう志貴ではあったが、聞かれる方のアルクェ
イドにとってはそれは赤面するしかない説明であった。自分は四つん這いのよ
うな恰好で腰を志貴の上にかざすように持ち上げ、恥ずかしい女性の部分とお
尻の奥底の秘奥を志貴の目の前に晒している。

 その上に志貴の指はあそこよりも恥ずかしい穴の上を弄り、その上にそのま
ま枕の下に顔を隠してしまいたくなるようなことを志貴は聞いてくる。

 アルクェイドが恥ずかしげにいやいや、と頭を振って枕に顔を押しつけてい
ると、お尻の穴を弄る志貴の指が巧妙に愛撫を始める。敏感なアヌスの周りを
撫で、揉み、くすぐるように動き、軽く突かれるたびにあっ、あっ、という細
い声が漏れてしまう。

「や、やめてよぉ……志貴ー……」
「んー、アルクェイドが答えてくれるまで止めない」

 そう、悪戯っぽく言われるとアルクェイドはううう、と小さく呻く。そんな
中でも、ぐい、とちょっと強めに肛門を撫でられると堪らずアルクェイドが鼻
に掛かったような声を上げる。とうとう、そんなくすぐったいような感覚に耐
えかねて、アルクェイドが小さな声で呟くように答える。

「ううん……したことないの……だって……わからないから……」
「やっぱり。ずーっと不思議に思ってたんだよ、じゃ……アルクェイドのお尻
の穴はこういうことのためにあるんだね」

 悪戯そうな志貴の声がそう告げると、お尻に当てられた指がぐにぐにと、揉
みほぐすかのようにアルクェイドの肛門の上を這う。まるで、マッサージする
かのような志貴の指に、アルクェイドの心の中の不安が、そしてそれに混じっ
た僅かな快感への期待が彼女に甘い声を上げさせる。

「そんな、そこ、汚いのに、志貴……」
「アルクェイドのは汚くなんかないさ。じゃ、息を吐いて力を抜いて……」

 まるでその言葉に言霊の力が宿って居るかのように、アルクェイドは息を吐
いてお腹と腰の力を抜く。はーっ、という息の中に、ぐにゅり、という自分の
中に入っていくる異物感――それは熱い志貴の肉を胎内に差し込まれるのと違
う、まるで魂の扉を誰に押し広げられ、心の中の秘奥を覗かれるかのような、
そんな未知の感覚。

「う、あ、うあぁぁぁぁっー!」
「あ、アルクェイド、力を入れないで……お尻に傷が付いちゃうから」

 そう言われて、びくん、と背筋を振るわせるアルクェイド。高く持ち上げら
れたアルクェイドの腰の一点に、志貴の人差し指が第一関節まで浅く刺さって
いる。入るべき所ではない桃色の菊座が指をくわえ込んで震える、卑猥な光景
が志貴の目前で繰り広げられていた。

 アルクェイドは、息を浅く吐いて腰に力が入らないように頑張っていたが、
自分のお尻の穴に指を差し込まれる言い様のない感覚に翻弄されていた。今ま
で自分が意識もしたことがない秘孔を辱められ、敏感な感覚を弄ばれている――
さらに、差し込まれたのが愛する志貴の指であることからか、その指がアルクェ
イドの中の心の大事な部分に触れているような感覚すらもする。

 志貴の指がわずかにでも動くと、アルクェイドの心と体は否応なく反応する。
志貴の手首が動いて指が回転するとアルクェイドの腰はその方向に堪らず動き、
徐々に深く差し込まれると背筋を走り抜ける感覚に息が詰まるように感じ、呻
きと喘ぎの混じった声を漏らしてしまう。

「あ、ううん……ん……ひっ」
「どう?感じてる?」
「わからない……でも……志貴の指が動くと……んっ!」

 アルクェイドの声が、ぐり、と動いた志貴の指のせいで生々しい喘ぎ声に混
じって消える。彼女の意識は、自分の中に差し込まれた志貴の指に集中してい
る――その為に、他のところがどうなっているかの注意などはおざなりになっ
ていた。

 そんなアルクェイドの姿態を眺めている志貴は、腰を押さえている手を回し
て目の前のアルクェイドの秘弁を指で弄る。興奮して外の肉が綻び、中の花弁
が疼きだしているその柔肌に志貴の指が触ると、ぎゅっ、っと後ろに差し込ま
れた自分の指が肉に噛まれる感覚が分かる。

「ひやぁっ!志貴ぃっ、そんな……」
「アルクェイドの花弁も濡れてきてるよ……中から精液が溢れてきて、しみ出
てきた液と混じって、べとべとになってきた……」

 そんな有られもない科白を口にする志貴は、後ろに差し込んだ指を僅かに動
かしながら、もう片方の指でアルクェイドの秘部を弄り始める。外の丘から内
側に向かって指を這わせ、色素の薄いピンクの下の唇をにゅるにゅると撫でる。

 志貴の指が特に敏感な鞘の上を撫でると、目に見えてアルクェイドの身体に
は反応がある。悲鳴のような高い嬌声と、指を噛みつくような後ろの穴の引き
締まる感覚。

 志貴の人差し指がくに、とアルクェイドのお尻に誓い窪みに当たると、その
ままにゅるんと吸い込まれる。

「あああっ、ああーーーっ」
「中もどろどろだ……俺のとアルクェイドのが混じって……これは、流さない
と綺麗にならないね」

 そう軽く笑いながら志貴は言うと、するっと前と後ろから指を抜く。そして、
体勢を買えて枕に顔をうずめて真っ赤な顔で唸っているアルクェイドの耳元に
顔を近づけると耳元に小さく囁く。

 前の秘部を弄られ、後ろの穴に指を差し込まれて愛撫されるという経験に翻
弄され、快感と不安で涙ぐんでいたアルクェイドは、そんな志貴の言葉に逆ら
えない。それが何を言っているのかを分からないまま、こくんと頷く――

「バスルームに行こう……ね?」

 そう志貴は告げると、ベッドの上のアルクェイドの膝と背中に腕を回し、ま
るでお姫様を抱え上げる騎士のような格好で抱き上げる。背は高いが体重は思っ
たほど無いアルクェイドの身体を腕の中に感じながら、志貴の足は、このマン
ションの中のバスルームの方へと向かう。

 志貴の中で、アルクェイドは言葉少なだった。ただ、呟くように小さく志貴、
志貴――という声が胸元に当たるのを聞いていた。

                           〈背中から愛してよ 後編 に続く〉