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彼女は吐息も荒く、俺の隣に横たわった。
ずっと向こうまで続く花畑は、とんでもなく贅沢な絨毯だ。纏うドレスが、
花開くように広がる。
かく言う俺自身は、とっくに力なく倒れ伏し、どこまでも広がる夜空を眺めて
いた。
広い広い、目眩がしそうなほどの闇色の空。吸い込まれそうな奈落の穴。で
も―――明るい。頭をころりと転がし、隣を盗み見ると、余韻に浸る彼女の横
顔もはっきり見える。桜色に上気した頬も、とろりと湿った紅い唇も、薄く随
喜の涙に濡れる睫毛もはっきりと。
また空を見上げる。
確かめるまでもない。こんなに暗闇が意味を失ってしまったのはアレのせいだ。
真上から少し傾いだ位置に浮かぶもの。
綺麗。アレはとても綺麗。
ヒトはアレにナニをミる。
まったき深淵。純粋すぎる銀と金。悪いユメ。パレードみたいな日常。儚い希
望。よりよい絶望。強靭な未来。過去。ウツロう現在。涙する輝き。わらう全
て。鏡見る世界。鑑みる世界。大地の果て。海の向こう。空の裏側。
ありとあらゆるモノを内包するがゆえに、ヒトというシュはそこに、なにもの
をも映すのだろう。
…………あるいはそれも幻想か。
ああ、わかっている。
アレを見て、いろいろ考えるのはずっとあとのコトになるんだろう。
ただ、怖い。
怖くなる。
あんまりにも大きくて、綺麗過ぎるそれは、まず俺たちに自らの矮小さを刻み
込む。
だから俺たちは、必死になってアレに何かを見つけ出し、押し付けて、誤魔化
し通すのだ。
恐怖に裏打ちされた、幻想の美しさを伴って。
…………そう、なんて綺麗な。
月。
Glitter in the silver and golden rain
皮鍋 中心
そんな事を考えていたら、手のひらが何か温かいものに包まれた。
「何を考えている? 人間…………」
冷めやらぬ熱を多分に含んだ声。ゆっくりと起き上がる気配。
俺の視界に滑り込んできた彼女は、握った俺の手を自慢げに見せ付けるよう
に頬擦りをし、俺の胸にのしかかる。
甘えるようなしぐさなのに、その視線は何者もを見下ろすそれだ。
「答えよ」
からかうような口調とともに、細い指先が俺の咽喉を摘む。
こんなの―――脅迫以外のなにものでもない。彼女は俺の咽喉なんて、紙を破
るより容易く引き千切る事ができるのだから。
冗談だろうが、もちろんだからと言って、ナイフを首に押し付けられるのはあ
まり気分のよい物ではない。咎める意味を込めて、彼女の指をとる。
互いに手をとる形。
俺は夜空を見上げて、言った。
「………………月を、見ていたんだ」
彼女はくすくすと咽喉を震わせて笑い、俺の胸に頬擦りをした。
「愚かなヤツだな、おぬしは。見上げるまでもない。月なら―――目の前に在
るであろう?」
ああ―――そうか。
黒の天上を照らす月はここにもあるのか。
彼女は月。気高く美しく、すべてのモノに恐怖を与える月。
朱い、月。それが彼女。
さあ、と風が吹いた。いっせいに舞い散る花びら。
火照った肌に心地よい。
花びらが舞い散る夜空を後ろに、視界にあるのはいっぱいの彼女の美貌。
重なる唇。絡み合う舌。
散々ねぶり、味わい、感じあって―――やっと離れた。
彼女の口腔から蕩けそうな吐息。
口の端からこぼれた唾液の滴をぺろりと舐めるしぐさも、彼女にかかればなん
て美しい。
そう。
彼女は綺麗。
おおよそ人間が、その道徳だとか価値観だとか文化だとか、そんなものを全て
無視して、ただ本能のように美しいとひたすら思う、彼女の奇跡めいた造形。
でも、罪深い。
綺麗で綺麗で、どうしようもないくらい綺麗なのに、彼女はそんな事を歯牙に
もかけず、無邪気に、淫らに笑うから。
―――いや、だからこそ美しいのか。
まるで吊るされた逆十字。
それはあるだけで罪深く、だからこそ人に禁忌の美しさを与える。
「……なんだよ。まだ足りないのか? 悪いけど、こっちは指一本だって動か
せないぞ」
縛り付けられそうになる視線を無理やり引き剥がして、俺はわざと軽く言った。
こいつを見ているとなんだか……全てを奪われてしまうような気がするから。
そして、それも悪くないと思う自分がいるからだ。
……まあ、言葉は本当だったけど。
「まったくうつけよの、おぬしは。……足らぬのはおぬしであろう?」
可笑しそうにそう言って、彼女は俺の股間に手をやった。
「…………っ」
甘い刺激。
…………まったく……このキカンボウめ。
俺のモノは、あれほどの情事あとだというのに、がちがちに強張り猛ってい
た。俺自身はもう動けないほどに疲れ果ててるってのに。
穴があったら入りたいとはこのことだ。いやそう言う意味ではなくて、フツー
の意味で。
視線をそらした俺に何を思ったのか、彼女はふらりと立ち上がった。
俺の体をまたがって立ち、どこかいたずらっぽく俺を見つめる。
…………月が、月に重なった。
俺の上に立つのは黄金の髪をたなびかせた朱い月。彼女が背負うのは銀の輝き
を放つ蒼明の月。
脳髄が、焼ける。
神経が引き千切られる。
肌が剥がされる。
視線が奪われるなんて物じゃない。
見ているだけで死んでしまうんじゃないかと思えた。
なんて―――美しい。
そんな言葉すら虚しい。
罪深いほど綺麗。
それだって嘘だ。
だってありえない。
怖い。
こんな綺麗なもの、あるわけない―――!!
「戯れだ、人間」
朽ちた死体のごとく動かない俺を見下して、彼女はワラう。
その華奢な指がスカートをたくし上げ、するすると持ち上げていく。
見せ付けるようにゆっくりと。焦らすようにもどかしく。
視線は動かせない。目を奪われたのではなく、ただ恐怖に蝕まれて。
やがて、布はめくりあげられ、秘められた彼女の花弁が姿を表す。
とろとろと蜜に溢れ、金の叢の中で淫靡に花開くそれ。
見つめる俺の体中から、どくりどくりと嫌な汗が吹き出てきた。
「人間よ。おぬしは浅ましいなあ」
くく、と咽喉の奥で笑う彼女。
そう―――こんなにも恐怖に震えているのに。
俺のものは赤黒く膨れ上がり、ひくひくと痙攣しながら、先端から粘液をこぼ
していた。
「…………んっ……」
彼女が身悶えるように己の体を抱く。真っ白な下腹がうごめき、その拍子に
俺が注ぎ込んだ白濁の液が、花弁からこぽりと溢れた。
―――それで、こいつが何をしようとしているのか理解した。
ああ、そうだ。俺は浅ましい。
なのにお前は綺麗だ。
綺麗で綺麗で、怖くなるくらい美しい。
だから早く。
早く、汚れてくれ。
「は―――ぁ―――ッ」
ぶる、と震える。
そして―――

綺麗な銀の輝きのなかに降るのは、汚れた金の雨。
End
あとがき
「おいおい。言っちゃなんだけど、こんなおしっこ絵になんでこんなポエミィ
(←かなり嘘)なSSのっけてんだヨ!!」
「だってSSも絵も、どっちも描きたかったんだもんよォーーー!!」
それがーいちばんだいじー♪
どうも、お久しぶりです。皮鍋中心です。
今回、月にょ祭と言う事で、多分誰もいじんないだろーと思い、朱い月様を
書いて(描いて)見ました。いえ、ルールで誰でもいいと言うのなら、朱い月
ャー(朱い月ファンの意)として彼女を描くのは自分としてはしごく当然なの
ですよ。もちろんほかのコも好きですけどー。
しかし金の雨て。そらないやろ。タイトル見てすぐピンと来ちゃうかもしん
ないなあ。
あ、英語間違ってるかもです。すんません、ない知識絞りましたけどー。
それにしても、絵も小説もやってると、どっちも中途半端になっちゃいます
ねぇ。どっちかに絞ったほうがいいのでしょうか。
余談ですが、「恐怖を憶えるほどの美貌」とかの表現は、自分が参考にさせて
もらっている某作家さんからです。大ファンなんですよー。
そういえば今回、絵を描くに当たって、少し悩んだ事があります。
「はたして、毛は描くべきなのかッッツ!!!!」
悩んだ挙句、朱い月様は生えてなきゃアカンやろ。もちキンパ!!てな事で
ばっちり描きました。ちとわかりにくいかもしれませんが。
秋葉あたりは無いほうが(自分の絵では)しっくり来るような気がするんで
すが。
皆さんの意見求ム! むしろ個人の趣味バリバリの意見で!!
改めて読み返すとさいてぇな話題振りですね…………。
冷めたところで絞めましょうか。
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