やらしいあたし


大崎 瑞香




 響く重低音が内蔵をかき乱すほど。
 耳をつんざくシャウトと響くエレキ、そしてドラムの激しい音の波。
 めまぐるしく変わるスポットライト。
 赤。黄。青。緑。
 らんちき騒ぎといってもよい、弾け方。
 ステージで行われているライブの熱狂の坩堝が観客に伝わっていく。伝わった熱さは焦げ付くようになり、ステージのバンドを狂わせていく。
 踏みならす足。リズムにのって動く手足。飛び散る汗。
 悲鳴にも似た歓声は、あたかも絶頂を迎えようとする女の喘ぎにも似ていた。
 熱狂。熱兇。熱響。
 轟音とかした音が物理的な圧力をもって、震わせる。ビリビリと震わせていく。
 全身をたたきつけるような、溺れるほどの音の氾濫。それからのがれるように、立って狂ったように手を振り叫ぶ観客達。

 そんな熱狂の坩堝から離れた場所で、ふたりは絡み合っていた。
 激しく求め合って唇を奪い合う、志貴と蒼香。
 ベースの響きを遠くに聞きながら、求め合っていた。

「…………この変態」

 蒼香は侮蔑の言葉を吐く。
 しかし志貴の手は止まらない。まるでライブのリズムに合わせるかのように、どんどん強くなっていく。
 躰がびくんと反応してしまう。
 こんなところで反応してしまう自分が恥ずかしかった。なのに志貴の指が一本でもそれると、そろりと快感を紡ぐだけで、躰の中にどろりとした熱いものでこみ上げてきてしまう。

 蒼香は、やらしい、と思う。たかが男が触れただけで、こんなになってしまうだなんて。好きなバンドのライブなのに、志貴とのデートなのに、志貴が求められただけで、こんなに、はしたなく――――。

 口から悲鳴が漏れる。
 志貴の指がスウェットパーカーの上から撫でるだけで、こんなに感じてしまう。

「……こういうのは嫌い?」

 志貴はわざとその小ぶりの胸に顔を埋めながら、上目遣いで見上げてくる。黒縁眼鏡の奥のくりっとした愛らしい瞳。その瞳で見つめられるだけで、胸がきゅぅっとなってしまう。

「……嫌いじゃないけど……」

 たどたどしく、蒼香は答える。官能に震え、掠れ気味な声が響く。

「――――でも、なんでトイレなんだよ……」

 蒼香はなぜここなのか、と思う。もしあたしのこんな貧相な躰でもいいのならライブを抜け出してホテルに行けばいいのに。なのに志貴はワザワザ、トイレに連れ込んで、こんなやらしいことをする。浅上に忍び込んできたときもそうだった。

 ――――もしかして、トイレが好きな変態だとか。

「……蒼香が欲しくて……我慢できない……から……」

 率直な志貴の告白。雄としての率直な言葉に、蒼香の子宮がきゅんとなる。
 その上目使いで見られると、腰奥が痺れて立っていられない。
 こんなにも志貴に溺れてしまっている。こんなにも志貴が好きだ。求められるだけで、期待して、こんなに濡らしてしまうぐらい、志貴のことが好きだ、と思う。

「……こんな……貧相な……躰……で……」

 背が小さいのは、まぁ女としてはいいという人もいる。でも胸は大きくない。腰は細いと思うけど、おしりも小さい。くびれているというより、スレンダーといってもいい躰に、蒼香はどうしても女として自信がもてない。

「……そんなこと……ないよ」

 志貴はパーカーのジッパーをおろして、シャツをたくし上げ、ブラジャーの上から胸を包む。痛いぐらい、強く揉む。少し固い蕾みたいな蒼香の乳は志貴は好きだった。自分デモヤバいかと思うけど、蒼香がまだ蕾のように感じられて、気持ちいい。いつまでもすれることなく、初々しいのがまた堪らない。自分の色に染まっていくのをみるのは、たまらない愉悦だった。

「……ほら、蒼香のここってこんなに柔らかいよ……」

 やや力任せにもみ上げる。蒼香からすればやや痛いぐらいだ。でもその痛ささえも気持ちよい。求められているようで、抑えがきかないようで、貪られる感覚。この躰が欲しいと求められている感覚に、蒼香の躰に甘い電流が流れ、ゾクゾクさせる。








(――――やっぱ可愛いよな……)

 恥じらいを浮かべ、いつもはみせない女のしなを見せる蒼香の破壊力といったら。クールで男友達のような、さらりとしたつき合い。なのりにいったん睦言になると、こんなにも艶めかしく色っぽい。全身がうっすらと桃色にそのり、男を求めてやらしくぬめっていくようで、たまらない。

 凛々しく男前のいつもの蒼香と切なく震えて艶めかしいこの蒼香。

 このギャップがたまらない。こんな可憐で、こんなにもやらしい表情の蒼香を知るのは世界中で俺だけだと思うと、堪らない。

 だから、もっと虐めてしまう。
 もっと淫らな、もっとやらしい、もっと可憐な姿を見たいから。


「……じゃあ、蒼香……」

 志貴は耳を甘噛みしながら、囁く。かかる吐息がくすぐったいのか、その小さな躰を揺すっている。

「……見せてくれない、かな……」
「――――――? なにを?」
「蒼香がおしっこしているところを」

 最初、蒼香には意味が分からなかった。そしてその意味がわかってくると、かぁっとなる。

「――――はぁ?」

 蒼香はまじまじと目の前の男を見てしまう。冗談だと思いたかった。しかしその瞳はとても真剣で、揺るぎない。

「……ば、バカぁ。そ、そかんな恥ずかしいこと――できるか……」

 そっぽを向く蒼香。頬は羞恥にそまって、ますます赤くなっていく。
 志貴はそんな蒼香の頬を撫でる。ビクンと反応してしまう蒼香が楽しくてもっと触れてしまう。指先で、首筋やわきをそっと撫でる。

「……っん」

 蒼香の躰がさらに甘くわななく。

「見せてよ」

 蒼香の全身が志貴の指でまさぐられる。スボンの上からおしりが撫でられる。鎖骨がなでられ、唇を擦られる。丹念に丹念に、弄られていく。志貴が触れたところから甘い電流が走る。びりびりとはしって、蒼香の思考を奪っていく。

「見せてよ」

そういって志貴はしゃがんで、蒼香のスボンをおろす。青と白と縞模様のショーツにつつまれた股間が目に飛び込んでくる。
 むあっとするほどのオンナの匂い。まるで湯気がたっているかのように、熱く、粘ついていた。その縞模様のショーツは愛液で濡れ、映えている茂みに貼りついている。

 そこに顔を埋めてくる志貴に、蒼香は慌てる。

「ダメ、汚いよ。そんなとこ汚いって……」

 なのに志貴はそこにくんくんと鼻を鳴らして嗅ぐ。芳しい香りを嗅ぐかのように。そんな獣じみた態度に、蒼香は腰をよじって逃れようとする。なのに志貴はその小ぶりの、でもはりがあっても見応えのあるおしりを鷲掴みにし、離さない。

「ダメ、ダメだって……」
「……蒼香のここはやらしい匂いがしていいよ……」

 蒼香はまるで自分の心が見透かされたかのようにドキリとしてしまう。いつもは凛々しいとかいわれているのに、一皮むけばこんなにドロドロ。志貴という男を知ってからはもう歯止めが掛けられない。こんなにやらしいオンナなんだって知れてしまうのが恥ずかしい。

 淫乱なんだ。好き者なんだ。

 志貴のことを、男のことを考えるだけで濡れてしまう。はしたなく求めてしまう。

 今も志貴の視線を感じるだけで、奥からとろりと蜜がこぼれてくるのがわかる。愛液が、牡を求めてこぼれてくるのがわかる。

(やらしいんだ。こんなにもやらしいんだ。あたしはこんなにもエッチなんだ)







 志貴は蒼香がいやがってもやめない。そのままペロリと下着の上から舐めた。少ししょっぱい味。汗が混じっているためだろう。でもその方が蒼香の素の味に感じられた。
 こんなに俺を求めているのだと思うだけで、いきり立ってくる。こんなにも可愛らしい痴態を見せられて、男として黙っていられない。それに、もっと虐めたい。

 指と舌で上から蒼香をいじる。舐めて、こすりあげる。そのたびに蒼香の膝がガクガクする。ガクガクすればするほど、愛おしくなっていく。感じてくれているのがわかるのは、こんなにも嬉しい。








(すごい顔をしている)

 志貴の顔をみてそう思った。まるで酩酊しているようかのように目をとろんとさせて、舌と指先で蒼香を求めていた。ぐちゃぐちゃと淫らな音がなり、粘膜がこすれる。そんなにもやらしい顔をして、貪られていくのさえ、愛おしい。

 こんなにも求めてくれている。こんなにも求められている。

 それだけで歓喜の性悦のまじった悦びが全身を駆けめぐる。
 おしっこをしているところを見たいという、言葉さえゆるせる気になってくる。
 こんなにやらしい志貴の顔をみれて感じているのだから、もしあたしがそんな粗相をしたら、志貴の目にはどんな風に映るのだろうか?

 そんなにやらしく?
 そんなに淫らに?

 ゾクゾクとする愉悦がこみあげてくる。痴態を晒す、粗相を晒す。志貴に、自分の男にだけそういう淫蕩な姿をみせびらかせるという、秘密をともにするという淫靡な愉悦。それを思うだけで、躰だけでなく、心さえ震えてしまった。

(なんだかんだいっても……あたしは志貴が好きなんだなぁ……)

 淫悦に爛れていく胡乱な頭の片隅で、ふと思うこと。
 志貴が好きだから見せられる。見せてもいいだなんて――志貴に開発されてしまったと思う。
 カイハツなんていう、爛れた言葉に赤面してしまう。でもその言葉どおり、蒼香は自分が志貴の色に染め上げられていくのがわかった。志貴というもので埋められていくという喜び、染められいくという悦び。

 何時の間にこんなに都合のよいオンナになってしまったのかと思う。
 オトコがもとめてれば、いいやなんて思ってしまう、都合良いバカなオンナ。
 でも。
 そんな自分が蒼香はけっこう好きに思えた。

「……いいよ……志貴……みせて……あげる……」

 鼻にかかった甘い声。やらしいオンナの声に、蒼香は、こんな声が出せたのかと自分でも驚いてしまう。媚びるような、縋るような、震える声。

 志貴はこちらを見る。まん丸い可愛い瞳に見つめられる。







「……いいこと、思いついた」

 にんまりと笑うと、蒼香をトイレから連れ出す。
 快感でぼおっとした蒼香は手を引かれるまま、のたのたとついていく。今自分がスボンをおろし、胸をはだけさせ、愛液で濡れぼそったショーツを晒しているのも構わず、ついていった。

 廊下には幸い人の姿はなかった。そのまま志貴は閉じた扉の前につくと、開ける。
 耳をつんざく爆音。シャウト。ドラムとエレキのむせび泣くような不協和音。怒鳴り声に近い歓声。
 ライブの観客席だった。人はハコにいっぱいで、熱に浮かされたかのように踊り狂っていた。
 いっぱいのため、壁際のステージなんかとてもみえないところに志貴と蒼香は並んだ。
 気づいて蒼香は素早く服を整える。でも愛液と腺液にまじったやらしい匂いは消えることはない。
 中でむせかえる汗とアドレナニンの匂い。そのなかにかすかに漂うオンナのやらしい匂いに、蒼香は赤面する。

「……こ、ここで……なにを……」
「こごて見せてよ」

 蒼香の頭は真っ白になった。

「ば……こ……へ……」
「バカやろう? こんなところでできるか、変態やろう?」

(わかってるならいうなー)

 蒼香は怒鳴りたいほど。
 でもこんなところで叫んだら見つけてといわんばかり。我慢して志貴をじとっとにらみ付ける。
 でも志貴はひょうひょうとした顔のまま、耳元でいう。

「でも、ここでやって」

 蒼香の口がパクパク動く。声にならないようだ。目の前で狂乱の坩堝のをちらりちらりと見ながら、蒼香は言い返す。

「できるか」
「でも、やって」

 蒼香は天を仰ぎ見た。今ばオトされている照明と灰色のコンクリートがみえる素肌の天井。ワザと見せつけるために配線が縦横無尽に走っている。業務用のエアコンがまわっているが、それでもその熱気は取り払われることはない。

(なんでこんな男にひっかかっちゃったんだろうなー)

 しみじみ思う。男ならライブハウスにいけば転がっているのに、よりによってこんな変態にひっかかるなんて――。しかも秋葉のお兄さんだし。あたしって男運がないのかな、とも思う。

 とたん、おしりをまさぐるような動き。
 志貴はステージの方を見ながら、まさぐってきた。
 こぶりの、でもまあるいおしりに指を這わせてくる。

「――――手伝ってあげるよ」

 手伝うってあんだよ、と言いたい。けど、今さっきまで高ぶっていた肉の火はまだ鎮火してなく、燻りとなってチロチロと肌を灼いていた。それを煽るように志貴の指が蒼香の性感帯を撫でる。

「……ダメだって……」

 膝がまたガクガクしはじめる。そのため志貴にしがみつきながら、蒼香は告げる。

「こんなとこじゃ……できないよ」

 うるさいけど、言葉はたしかに耳まで届いているはずなのに、志貴は知らん顔をして指を動かしている。

 蠢くような指使いに蒼香は喘いだ。
 じんわりとじんわりとせまってくる感覚。熱くたぎったものが躰の奥からこみ上げてくる。あつくこみ上げてきて、躰をよじらせるしかできない。ただ志貴の腕につかまって、耐えていた。







 すると指はすっと、ズボンの口から入り込み、そのまま水蜜桃なおしりに触れた。

「…………っん……っふぅ……」

 かすかに聞こえる蒼香の喘ぎ声。
 柔らかく、張りのあるお尻をなで上げる。
 時折、ツンとつつく。
 ムズ痒いように、おしりをくねらせる蒼香を横目で堪能しながら、指先の悪戯を続けた。
 くねらせている態はまるで男をさそっているようだと志貴は思った。
 指先からつたわる肌のさわめきから蒼香が感じているのがわかった。それに志貴も感じていた。指先に感じるなんともいえない弾力が、男をかきたてる。
 目の前では目元を紅く染め、快感に必死に耐えている蒼香の痴態。悩ましげに顔を苦悶の歪ませながら、その吐息はあくまで桃色で、粘ついていた。

 お尻の曲線をなぞった。
 腰骨の辺りから始まり、柔らかい膨らみにそってなで上げる。そして腰の方までかすめるぐらい大きくゆっくりと。

「………くはぁ……」

 蒼香はやらしい吐息を吐いていることにも気づかない様子で、腰をゆすっていた。この快楽から逃れるようにしているが、志貴は手をゆるめることはしなかった。

 時間をかけていくと、おしりの柔肌はねっちりと吸い付き始める。誘うような媚態にも似た吸い付きに、ぞわぞわとする。
 もじもじと太股を閉じたり、開いたりして、必死にしがみついてきた。

 そして志貴は指先をとある一点へと進めた。







「――――!」

 蒼香は思わず声を上げそうになる。
 志貴の指が、うしろの窄まりにちょんと触れたからだ。

「――――――ヤぁ……」

 蒼香は首をふり、志貴を見上げる。しかし志貴の指はその周囲を丹念にもてあそんだ。
 つんとつつき、指のヒラでこすりあげ、ゆっくりとゆっくりとほぐしていく。

「…………だぁめぇ……」

 舌足らずな蒼香の声。快感がすべての神経を奪ってしまっていて、まともに発音することかできない。

 つんつんとすばまりをつつく指先に妖しい快感を覚えてしまっていた。
 こんな不浄なところなのに、と思っても、志貴に仕込まれた牝躰はねっとりとした身震いするほどの性悦を生み出していた。
 その妖しい官能に淫蕩に惚けた顔を浮かべる。

 皺ひとつひとつを数えるかのように、指先がこすりあげてくる。じんじんとした愉悦が蒼香のおしりから発していた。不浄だと思えば思うほど、その快感は強く、激しくなっていく。
 指先がそれは執拗なまでに撫で、アナルをもみほぐしていく。
 アナルがひくついているのが指先から伝わってくる。やらしく求めているのが、それでわかった。
 それでも志貴の指は責めるのをやめない。

 蒼香は涙目になって、声を上げていた。ライブの大音響と歓声によってかき消されているが、志貴の耳にはっきりと飛び込んでくる淫悦に満ちたオンナの悦びの声。

 ゾクゾクとする愉悦が志貴の肌の下をはいずり回り、背筋をかけぬけて脳髄を貫く。
 ここまで、男をしなかった蒼香をカイハツしたのだという征服感にも似た男の愉悦。凛々しい蒼香も、恥じて可憐な蒼香も、そしてこの淫蕩に惚けたやらしい蒼香も、すべて俺のものだという愉悦に、志貴は気づかないうちに笑みを浮かべていた。

 ゾクゾクする感じに蒼香はつつまれる。
 やらしい虫が肌の下をはいずり回っている感じ。
 内蔵がかゆいような、そんな感覚。
 肉体の奥深くから媚薬がでているかのよう。
 じわじわと、緩やかに、牝躰が火照っていく。
 全身のどこもかしもが熱く、蕩けていく。
 熱くて、たまらなくて。
 じんわり、と甘く爛れた感覚が躰に染みていく。
 犯していく。犯されていく。
 何時の間にか声が出ていた。
 擦れたような、鼻にかかったやらしい声。
 みんなに聞かれちゃうと思うのに、止められない。むしろ大きくなっていく。
 この不浄なところからじんじんと痺れる妖しい愉悦。背徳めいた官能。
 くるおしいほどの高まりがおしりを熱くさせる。
 なのに、志貴の指はそこをいじるだけ。
 もとめてひくついているのに、いじるだけ。
 嬲って虐められるだけ。
 柔肉をほぐして、もっと柔らかくしていくだけ。
 なのに、それだけで昏く、低く、熱く、ごろりとしたものがこみ上げてくる。
 淫虐の悦びが蒼香の全身を貫く。
 嬲られているというのに。
 こんなところで、みんなに見られるかも知れなというのに。
 なのに、志貴の指はさらに丹念に、執拗に虐める。
 虐められているのに、悦んでいる。
 熱くて、苦しくて、切なくて、堪らない。そのすべてが気持ちいい。
 たまんなく痺れるぐらい、気持ちいい。
 変態だ。あたしは変態なんだ。志貴のコトなんていえない。
 おしりを弄られて、みんなの前でいじられて、こんなに悦んじゃう変態さんなんだ。
 そう思えば、さらに昂ぶっていく。
 強い愛撫がつきづきに今までは考えもしなかった、めくるめく官能へと導いてくれる。
 昂ぶりが熱く、神経を焦がしていく。
 焼きつくほど。
 灼けるほど。
 まともでなんかいられない。
 焦げ付いてしまって、蒼香というものが失われていく。
 ただの牝になっていく。
 たまらなくて躰をよじって、声をはりあげて、よがる牝に。
 淫乱な牝になっていく。
 躰が勝手に反応してしまう。
 指先に、志貴に、弄ぶ感覚に。
 じりじりとした圧迫感と期待感。
 躰の中で膨らんでいく甘美な愉悦。
 そして身をよじっても逃げられない狂おしい想い。
 志貴の瞳が目に入る。
 こちらを見ている。
 熱く見ている。
 見ている。こんな淫乱でやらしいあたしを見ている。
 ゾクリとする。
 ゾクゾクする。
 躰が熱に膨れる。
 溶けていく。
 熔けていく。
 融けていく。
 そして、爛れていく。
 ドロドロになっていく。
 気持ちいい。

「弄って……もっと……弄って……」

 せがんでいた。
 むせびなき、よがって、せがんでいた。
 おしりの穴をいじられているのに、脳を直接いじられている法悦。
 ざらりとした粒でこすられている、肌が粟立つ官能。

 ふと志貴の股間を見た。
 膨らんでいた。
 あんなに膨らんでいた。
 あたしを見て興奮しているんだ。
 欲情して、求めて、劣情を催しているのだ。
 すごい。
 あんなに膨らんでいる。
 スボンの上からでもわかるぐらい、強く勃っている。
 鼻の奥でつーんと志貴の臭いがした。
 やらしい牡の匂い。
 口に含んでしゃぶっていた時の、あの味。
 志貴の味。
 粘ついて喉に絡んで、でもなぜか美味しい志貴の味。
 たまらない。
 いやらしい志貴の視線。
 膨らんだ志貴の股間。
 いじくりまわす志貴の指。
 すごい。
 崩れてしまう。
 アソコがびしょびしょだってわかる。
 やらしくぬかるんで、ドロドロだってわかる。
 気持ちいい。
 もっと。
 気持ちいい。
 もうダメ。
 ガマン、できない。
 ガマン、なんてできない。
 荒れ狂う、淫靡でねつとりとした感覚の中――。
 ただ、熱くて。
 ただ、欲しくて。
 そのためにお尻を動かしてしまう。
 指先に陰肛をこすりつけてしまう。
 早く突いて。
 もっとほぐして。
 貫いて。
 早く、早く、早く。
 もっと、もっと、もっと。
 切なくてたまらない。
 はしたない感情。
 はしたない悦び。
 はしたない、はしたない、はしたない。



 とたん、志貴の指が蒼香の陰肛を貫いた。
 一度に二本も。



「――――――――――っ!!」

 あまりにも待ち望んでいた快楽に、蒼香は声にならない悦びの声をあげた。
 押し広げて入ってくる異物感。
 菊座が犯されているという感覚。
 熱く妖しい淫虐が、蒼香を頭の芯まで痺れさせた。
 二本の指が菊座を乱暴にかき乱す。
 腰から下がとろけてなくなってまったかのよう。
 直接、胎内を弄られるという、この感覚に、蒼香は喘いだ。
 口を大きくあけて、酸素を求めてパクパクさせる。

 とたん蒼香のスボンが黒く濡れ始める。
 チョロチョロとした水音。
 股間に沁みができると、それがそのまま両脚を濡らし始める。

(でてる。――出ている)

 蒼香はものすごい、躰全体が惚けるような解放感に包まれながら、粗相した。
 志貴の指はやらしく陰肛を貫いたまま抜き出しされている。その快感のそって溢れていた。止めようと思っても止まらない。それどころか気持ちよかった。
 漏らしている。
 漏らしているんだ。
 あたし、漏らしちゃっているんだ。
 ゾクゾクとする――――背徳の悦び。







(可愛い)

 志貴は素直にそう思った。
 蒼香は恍惚の表情を浮かべながら、おもらしをしていた。
 アナルを貫かれて、感じてしまい、惚けて顔をうかべながら、おもらしするといういやらしい痴態に、志貴は痺れていた。
 おしりは突き入れた指を、嫌がりもせずに呑み込んできゅっと甘く締めつけている。
 淫らに開発された菊座は、志貴の指をこんなにも貪欲に貪ってくる。
 鼻にかかった悲鳴にも似た嬌声をあげながら、全身で縋りつくようにしがみつきながら、おもらしをしてしまって躰を震わせている。
 チョロチョロと聞こえる尿の音。
 足もとにひろがる水たまり。
 かすかに震える躰。
 感じきって、惚けきってトロトロにとろけきった蒼香のやらしい顔。
 ライブの熱気につつまれる観客席に漂うやらしいオンナの匂いとツンとするアンモニア臭。
 ライブハウスをつつむ熱狂の中、志貴は蒼香のことが愛おしくてたまらないと思った。




◇     ◇     ◇




「――――――バカ。遠野のお兄さんのバカ……」

 蒼香は怒っていた。でもそんな姿も志貴にとっては愛おしい。わざわざ志貴と名前ではなく、まわりくどい言い方をするときは蒼香が拗ねた時の呼び方だとわかっているから、それさえも微笑ましい。

「なに笑ってるんだよ」

 凛々しい、男友達のような視線で志貴を見据える。

「ゴメンゴメン。ちゃんと着替えを用意してきたから、ゆるしてくれよ」
「用意するのは当たり前だろっ!」

 志貴はライブ中抜け出して、コンビニでショーツと量販店でスェットを買ってきた。その間、蒼香はトイレに閉じこもっていた。
 いつバレるのかとヒヤヒヤものだったが、ライブに熱中していて気づかれなかったのだと思う。いやもしかしたら気づいていてみられたのかもしれない。にやにやにと、こんなところに淫乱な女の娘がいるって思われたのかも知れない。

 蒼香はとっぷりと落ち込んだ。

(好きなバンドなのに、もし追っかけにみられたら、もうこのバンドのライブにこれないじゃないか)

 がっくしと肩を落として、溜息をついた。

 そんなライブ好きなロック娘の心にも気づかずに、志貴は包装をとき、蒼香に着替えを渡す。
 それを身につけ始める蒼香。ふと、志貴の視線に気がついた。

「……あっち見てろよ」
「……………」

 でも志貴は蒼香の着替えを見ている。

「着替えをみて、楽しいのかい、遠野のお兄さん?」
「うん、楽しいよ」

 蒼香は知られないように溜息をついた。

「蒼香のだったら、着替えでも、おもらしでも、ね」

 その言葉にかあっとなってしまう蒼香。もじもじと照れる姿を志貴は堪能する。

「――でさ、蒼香」

 その言葉に不穏当なものを感じた。
 もう仕方がないと志貴の前で堂々と着替えながら、チラリと見る。

「今度は俺にかけてくれない?」

 …………。
 …………。
 …………。
 …………ハァ? イマ ナンテ イイマシタカ トオノ ノ オニイサン?

 唖然としてキョトンとしている蒼香を無視して、志貴の言葉は続く。

「でさ、蒼香にも俺のを飲んで貰って、さ……」


 わからない。
 ワカらない。
 ワカラナイ。

なんで志貴がそんな変態チックな、いやいや真性の変態なことをいうのかが蒼香にはわからない。
 そんな特異な性癖があったのか?
 思わず、ひいてしまう。
 でも志貴はにやりと悪党のような笑みを浮かべて、一言。

 お願いだから、

 と言った。

(あーあ)

 蒼香は溜息をまたついた。今度は盛大に志貴に見せつけるように。

(こんな男にひっかかっちゃって、あたしはいったいどうなるんだろう?)

 志貴の方をチラリとみる。嬉々とした笑みを浮かべていた。
 その笑みに、ドキリとしてしまう。
 たとえ変態チックでも、それは確かに蒼香を求める行為であって。
 こんなことを他の女に頼まれるぐらいなら、いっそとも思う。

(あたしってバカだなぁ)

 そう思うけど、どうしようもない。それこそ惚れた弱みなのだから。
 それに、こんなにやらしい姿を見たいのも、見せたいのも志貴だけなのだから、仕方がない。

 そう思うとくすくすと笑ってしまった。
 志貴はきょとんとして見ている。

 蒼香は心の中でつぶやく。

(変態な志貴に、やらしいあたしか――――うん、お似合いだな)

 染められてしまったと思う。でもそれさえも愛おしい。

 やれやれと思いながらも、蒼香はこの次のやらしい行為への期待に胸を確かに、そして強く躍らせていた。



<おしまい>


あとがき(言い訳)


 ……ええっとかーなーりー変態さんになってしまった気がします(汗)
 志貴くんってば鬼畜? わたしの書く志貴くんは鬼畜じゃなかった気がしたのに……あうあう(汗)。 これはすべて題材がわるいのよ、と言ってみたり(笑)

 にょーって難しいです。濃ゆい方からみればにょーなんかじゃないって言われそうですけど、あたしの最初の限界です。
 にょーの奥深さに挑んだあたしがバカでした。あうあう。こんな中途半端なものでも、やらしーと思っていただければ幸いです。


 リクエストでは「都古ちゃん」と受けたのですが、どうしてもかけず、まずこちらを書かせていただきました。


 それではまた別のSSでお会いしましょうね。



8th. August. 2003. #117


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