「突き刺すような」

 作:しにを





「恥ずかしいです、志貴」

 小さい、しかしはっきりとした声。
 ただ、それでも普段の声と比べれば微かに震えにも似たものが混じっている
とわかる。
 それに答える方は、顔を上げて視線を合わせたものの、すぐには言葉を口に
しない。
 顔とそこに交互に眼を向け、ようやく口を開く。

「でも、脚は閉じないんだね、シオン?」

 今はまっすぐにシオンの顔を見つめている志貴。
 その視線故にだろうか。
 それとも志貴の言葉の為か。
 志貴の眼に、シオンの頬がわずかに赤く色づくのが見えた。
 言葉の通りの羞恥の表情。
 その頬染める様には見惚れるような魅力があった。

「本当は、俺に見て欲しいのかな?」
「そんな事はありません」
「そうなんだ、じゃあ、俺に見られるのは嫌?」
「嫌…………ではありません。
 でも、こんなにまじまじと見られるのは……、恥ずかしいです」

 だろうな、と志貴も思う。
 そうした思いを外には出しはしないが。
 言葉にせよ、表情にしろ。
 むしろ、意外そうな顔をして見せる。

「でもさ、初めてじゃないだろう、シオンの可愛い処を見せて貰うのはさ?」

 志貴はそう言いつつ、視線を落とした。
 スカートが巻き上げられ、覆い隠すものも無い腿が露わになったシオンの下
半身。
 慎ましやかとは真逆な、大きく脚を左右に開いた姿。
 そして、本来であれば秘められた部分を守り隠す薄布―――、下着はあるべ
き場所にはなかった。
 丸まり小さい塊となり、シオンの足首に絡み付いている。
 要は、シオンの恥毛も、それが覆う恥丘も、性器も何もかもが、剥き出しに
なっていた。
 志貴の眼は何に邪魔される事なく、シオンを見つめている。
 それでもそれほどに開脚していなければ、辛うじて何もかもを詳らかにする
のは回避しえたかもしれなかったが、秘裂は開いて中の赤く色づいた媚肉の奥
すらも剥き出しにしていた。

 指摘の言葉に反応するように震える粘膜。
 志貴がちょんと、そこを突付く。
 小さなぴらぴらとしたピンク色の肉片。
 その湿った感触。

「何度も触れたし、舌で舐めた事もある。
 それに……」

 志貴はその先は言わない。
 しかしシオンは発せられない声を聴いた気がした。
 エーテライトによらず、志貴の思考を読んでいた。

 ――シオンの中にも何度も挿入れているんだし。

 かあっとさらにシオンの頬が真っ赤になる。
 
「だったら、志貴はこんな真似をしなくても良いではないですか」
「でも、今までじっくり見た事ないし。
 いい機会だし、シオンをもっと良く知るのも悪くないと思うんだ」

 相互理解は大切だよな、と呟き、ひとり頷く。
 その志貴を見て、シオンは小さく溜息を吐いた。
 何故、こんな事を自分はしているのだろうと思いつつ。
 それでも視線を外したり目をつぶったりはしない。
 そうすれば、間近で自分のそこを見入る志貴の姿を見ずにはすむが、よりい
っそう意識してしまうのがわかっているから。
 志貴の声、触れるような息、指の感触、そんなものがずっと体に熱を帯びさ
せるのがわかっているから。

「そう言えばさ、知ってる?
 昔の事だけど、日本人の女性のここは西洋人とは違うって言われていたんだ
って」
「そうなのですか?」

 飽く事無く秘裂を刺すような視線で刺激し続けていたが、ふと志貴は思い出
したように言葉を口にした。
 それは唐突で、シオンは少し首を傾げる。

「うん、嘘じゃないよ。
 日本人の女のは、縦に裂けているってアメリカだかヨーロッパで伝えられた
って、何かの本で読んだよ」
「縦に?」

 シオンは志貴の言葉の一部を、オウム返しする。
 ああ、と志貴は短く応じる。
 シオンは羞恥の表情を消し去り、考え込む。
 しばしの思考の末、疑問を呈する。

「それが、当たり前ではないのですか?」
「うん、そうだよね。
 でもさ、何かあったんだろうね、人種の差か何かが、ここの形にも……」
「肌や瞳の色の違いはあっても、器官に違いは無いでしょう、志貴」
「違いは無い?」

 今度は志貴がオウム返し。
 訝しげな表情。
 さらにしげしげとシオンの秘処を覗いて首を傾げる。
 それを見てシオンもまた、眉に皺を寄せる。

「あの、志貴……」

 とまどっている口調。
 不安そうに顔色が変わる。

「私の……」
「私の?」
「その……。私のここが、なにか……」
「ああ、シオンは自分のが変なんじゃないかと不安になったんだ」
「い、いえ。私は志貴の目に……」
 
 うーんと志貴は少し考える。
 シオンは何を言いたいのだろうかと。
 
「ああ、なるほど。
 秋葉達のに見慣れた俺の眼には、シオンのがまともに見えていると心配にな
ったのかな、もしかして?」
「はい。そっきから、そんな観察して……、私のは変ですか?」
「とんでもない、おかしいどころか凄く綺麗だよ」

 そう素直に志貴は答える。 
 しかしシオンの愁眉はそのままだった。

「別に嘘はつかないよ。だいたい日本人以外って事ならさ、俺は他にも……」
「あ、そうでした。真祖の姫や代行者」
「その通り。……って公言していい話じゃないけど。
 ただ、他の人と比較とかじゃなくてシオンのに興味があるだけだよ。
 ここだって、まだよく知らないだろう?」

 指がぬめったまま、動く。
 谷間を下へ。
 蟻の戸渡り。
 そして、そのさらに下へ。

「や、志貴、ダメです」
「ううん? ごめん」

 志貴の指が、そこを軽く突付いても、シオンはすぐに反応しなかった。
 だが、皺を濡れた指が撫でた感触に我に返る。
 異端の部分をくすぐるように動いている。
 シオンの異議に、なおも弄るという真似はせずに志貴はすぐに指を離した。
 その、シオンの後ろの窄まりから。
 緊張からだろう、指が離れてなおぴくりと小さくそこが動いた。
 
「そんな処……」
「でも、ここが……そうした行為にも使われるって知っているだろう、知識と
しては、シオンだってさ」
「それは、そうですけど。
 志貴は、好きなのですか?」
「うん。前とはまた違った感触が楽しめるし。
 それに、ここまで許して貰えるという嬉しさとか、その人の全てを知りたい
という想いとか……。
 もちろん、嫌がっているのを無理になんて事はしないよ」

 慌てて自分を安心させようとする志貴に、シオンは表情を変えないものの内
心で嬉しく思った。
 しかし、アブノーマルな行為を志貴がしている事実に軽い衝撃はある。
 そんな処に、志貴のモノを……。
 まだそこに志貴の指が残っているようなむず痒さを感じる。

「私は……」
「今は無理に要求しないよ。
 シオンがもしも平気になれたなら、そのうちに試してみようね。
 前に挿れるよりも感じる人もいるくらいだし」

 誰だろうかとシオンは思う。
 そんな、普通の性行為を逸脱するような真似をするのは……。

 兄の為ならば何でも許しそうな秋葉。
 その辺は放埓に対応するように見える琥珀。
 それとも、性的な禁忌など持ち合わせていないような真祖の姫君?
 ぼんやりと彼女らの顔を思い浮かべていたシオンを見て、志貴はしまったな
という顔をする。

「あ、ごめんね、シオン」
「な、何がです?」
「シオンと一緒なのに、他の女の子の事なんて言うなんていけないよな。
 それもこんな恥かしい事して貰っている時に……」
「志貴……?」

 ぼんやりとしたのを、非難しているか、あるいは気を悪くしたと解釈したの
だろう。
 勘違いではあるが、その気遣いはシオンの好感を呼び起こした。

「それに、先輩にも失礼だな、秘密の事をぺらぺら話すなんて。
 シオン、お願い、今の忘れてくれる?」
「はい、わかりました」

 すまなそうな顔をする志貴にシオンは頷く。
 僅かに眼に和みがある。
 そして、志貴の言葉を聞き逃さず内心で呟く。
 それにしても、いちばん縁遠く思えた代行者がそんな真似を……、と。
 幾分かの驚嘆。

 改めて志貴は、同じ熱意を持ってシオンの性器を細かに観察し始めた。
 眼だけでなく、先ほどは控えめだった指での触診も加わっている。
 そこまでされるとシオンとしては、また疑問が生じてくる。
 思うだけでなく、実際に口にする。
 黙ってされるままでいるのも、どうにかなりそうで耐え難かった。

「そんな処をしげしげ見て、志貴は楽しいのですか」
「もちろん」
「……」
「シオンだって、この前俺のを熱心に観察していたじゃない」
「それは学術的興味です」
「ふぅん……」

 明らかな疑いに満ちた目。
 
「あんなに外観に劇的な変化をする器官は……、本当ですよ、志貴」
「はいはい。だったら俺がシオンのに興味持っても不思議じゃないよね」
「それは……」

 でも、私は男の人など初めてですが、志貴は他に……。
 内心で呟きつつも、シオンはことさらには抵抗の色を見せない。
 別段嫌な訳ではない。
 賛美の表情は決して、心地悪いものではなかった。

「でもさ、さっきとは逆の事言ってるみたいだけど、やっぱり、みんないろい
ろ違っていて同じって事はないんだなあ」
「そうなのですか?」
「うん。秋葉のはもっとこう……」

 手である種のラインを描きかけ、志貴ははたと気づいたようにやめる。
 空中に描いた絵を消し去るように、手をぶんぶんと振る。

「ええと、とにかくシオンのも素敵だよ」
「説得力が乏しいです」
「本当だって。それにこんなにいやらしいし」

 そう言いつつ、志貴は膣口の触手じみた陰唇に触れた。
 指にまとわり付くような反応、柔らかい感触。
 その指が受ける快感を存分に志貴は堪能する。

「ここも、ほとんど触ってないのに……」
「ふぁッ」

 ちょんと包皮に守られた陰核を突付かれる。
 その微かな刺激に、シオンは声を出し、真っ赤になる。
 自分が出したと思えぬ声。

「可愛いい声だね」
「うう」

 恥じているのを気づいているのか、志貴がダメ押しをする。
 そうしながらも指の探索は続く。
 外周をなぞり、そしてクリトリスと膣口の間へと。
 潤いに満ちた粘膜の小さな窪み。

「ここから、おしっこ出るんだよね」
「は、はい……」
「不思議だよな、こんな形なんて」
「いや……」

 志貴の指の腹が、そこを撫でる。
 あくまでも優しいタッチ。
 不快感は無い。
 むしろ好ましい感触。
 しかし、そんな処に触れられている事がたまらなく恥ずかしい。
 こすられて、変な匂いが移らないだろうか。
 そこを弄られる事で、新たに恥ずかしい液がこぼれないだろうか。
 そんな事を思い、シオンは頬を赤く染める。

 志貴の指がさらに動く。
 撫でるような動きから、突付くような形に。
 指先が窪みを刺さすように、しかし軽い力で押す。

「それに、なんでこんなに可愛いんだろうな、こんな処が」
「あ、痛い……」
「ごめん、シオン」

 爪先が浅く潜っていた。
 実際には肉体の痛みはほとんど無い。
 吃驚したのと、微かな恐怖の為に口を出た悲鳴。

 志貴はぱっと指を離すが、なおも名残惜しげにシオンの秘処を見つめていた。
 もじもじとシオンは体を動かす。
 無意識の恥じらい。
 それも無理も無い。
 大きく股を開き、異性の目に自分の性器を晒しているのだから。

 ふと、志貴はシオンの顔を見て、視線を僅かに横へとずらした。

「志貴、何を……」
「俺はシオンみたいにエーテライトとかは使えないからね」

 志貴の手がシオンの頬に触れる。
 何を……と身を硬くするシオン。
 その様子にくすりと笑って、志貴は手を滑らせる。
 シオンの髪へと。
 手の中で編んだ髪を動かし、毛先まで流す。
 先端部を手に取り、それを毛筆でも持つような仕草で近づける。
 シオンの秘処へと。
 
 筆先を墨に浸すように、先ほどまでの行為で露を滲ませた膣口に触れさせる。
 丹念に、何度も。
 シオンはその感触に、必死に声を押し殺して耐え、しかし新たな甘露を次々
とこぼしていく。
 そして、準備は整ったと判断したのだろう。
 志貴は湿った穂先をまっすぐに触れさせた。
 先ほどから執心の尿道口へと。
 
 細い絹糸のような髪の先が、潜る。
 異様な感触。
 それを消化できず、シオンは叫んだ。

「痛い、痛いです、志貴」
「え、ああ、これだと強すぎたか」

 慌てて志貴は手を戻す。
 しかし、手にした筆を放そうとはしない。
 濡らしたとはいえ、足りないのだろう。
 ちょっと考え志貴は筆先を口に含んだ。

「あ……」

 指や唇ではない。
 直接的に志貴の唇や口の感触が伝わる訳では無い。
 しかし、髪を口に含まれた事は、シオンの背筋に電気のようなショックを与
えた。
 肉体より精神の作用によるぞくぞく感。

 ただ髪を口に運ばれただけではない。
 濡れた女陰に浸され、尿道口を探った髪の先。
 それを、ためらいなく志貴が口に含んでいる。

 じっとそれを瞬きもせず、シオンは見つめていた。
 口をもごもごさせて、志貴は髪を抜き取った。
 余分な水分を唇でしごくようにして、そうして現れた髪は、志貴の唾液で濡
れていた。
 それを注意深く、シオンの秘裂に再びあてがう。
 筆先がゆっくりと消えていく。

「これならどう?」
「柔らかくなっています……、ではなくて」

 抗議するようなシオンの目に、志貴は動じた様子を見せない。
 志貴の関心は手に伝わる感触に全て向かっていた。 
 僅かに開き、歪む、小さな口を刺すように見つめている。
 そして実際に狭道を刺さっている細糸を。

 濡れて柔らかく、それでいて髪は強かった。
 穂先を揃えて突付かれると、ほとんどは押し曲げられ、斜めに向きを変える。
 しかし、何本かの髪糸はまっすぐに志貴の手の動きのままに前へと向かう。
 手で触る以上に、シオンの未知の部分が伝わってくる。

 一方、シオンにしてもまったく未知の感覚だった。
 怖気振るう感触。
 ひそやかで、それでいて体中に広がる痺れのような何か。

 言葉無く、志貴とシオンがシオンの髪を通して繋がっていた。
 そして、幾たび摩擦があり、細い髪が出入りし、シオンは未知の感覚に震え
ただろうか。
 そこにまた別の感覚が混じった。
 シオンがぶるっと震える。

「あッ……」

 切迫したような声。
 没頭していた志貴が、何事だろうと顔を上げる。
 蒼白になったシオン。
 何かに耐えるような顔。

「どうしたの、シオン?」

 志貴の声にシオンは反応しない。 
 身を起こそうとし、途中で止まる。
 絶望的な顔。
 志貴がまた何か言おうとした時、シオンが叫んだ。

「いや、出ちゃう、志貴、見ないで、見ないでくだ……」

 何が……。
 戸惑い、志貴が問い質そうとした時。
 声ならぬ音が起こった。

 ちゅぷ、ぴちゃ…ちゃ…しゃああああああ……。

 水音。
 流れ、弾ける音。
 それはシオンの秘裂から起こっていた。

 細い髪でただでさえ狭い尿道が塞がれたためだろうか。
 震え、少し口を広げたシオンの粘膜から、勢い良く尿が放出していた。
 出る傍から、弾けるように広がり、飛び散る。

「やだ、こんな……、こんなの……」

 何をそんなにと思って、志貴はああと気づいて髪を抜き取った。
 濡れた穂先。
 そして、夾雑物を除かれ、水流の拡散が少し変わる。
 四方八方に飛び散っていたものが、おさまりを見せていた。

 それでも、シオンは恥ずかしさに震えている。
 何とか、排泄行為を堪えようとしているのが見て取れる。
 筋となって迸る尿の勢いが強く、弱く、変化している。
 しかし、途絶える事は無い。
 
 女性の場合、一度放尿を始めたら、意志の力では最後まで止まらない。
 そんな話を聞いた事があったなあ。
 そう思いつつ、志貴は見つめ続けた。

 羞恥に泣き顔になっているシオンの姿。
 シオンの体からも、こうした排泄物が迸っているという事による倒錯的な興
奮感。
 何より、その放尿の姿を、志貴は素直に綺麗だと思った。

 ぽと、ぽと……。
 
 いつしか、迸りは、僅かに雫をこぼすだけになった。
 ちょろちょろと漏れて、秘裂を濡らし、伝い落ちる。

 志貴は、指を伸ばした。
 指でその溜まりとなった尿液を弄る。

 そして手をかざすようにしげしげと見つめる。
 愛液のように、透明。
 けれど、糸引くような粘つきは無い。
 何の気なしに志貴は、湿った指を舐めた。

 悲鳴のような声。
 シオンが羞恥ではなく、怒りにも似た赤い顔をしていた。

「何をしているんです、。汚いです、志貴」
「そんな事ないよ、シオンのだもの。
 飲めって言われたらさすがにためらうけど、これくらいは……」

 平然と、滴のぽたぽたと落ちる手に舌を触れさせる。

「うん……」
「そんな……、なんて真似……」

 信じがたい驚きを浮かべた表情。
 しかしシオンは、拒否感は浮かべていなかった。
 己の排泄物を口に含んだ志貴を見る目は……、わずかにうっとりとするもの
すら含んでいただろうか。
 しかし、志貴の喉が動いたのを見て、我に変えたように、言葉を口にする。

「いや、嫌です、志貴……」
「ああ、泣きそうにならないでよ。
 普段は秋葉とかに近いのに、こういう時は翡翠みたいなんだな。
 ごめんね、もうしないから」
「……約束ですよ」

 うん、と志貴は頷く。
 それならいいです、と小さくシオンは呟いた。
 しばしの沈黙。
 そして、お互いに自分の体と相手の体を、辺りの惨状を見回す。
 飛び散ったシオンの尿があちこちに残っている。
 シオンが溜息をつく。
 非難めいた顔が志貴を見つめる。

「お風呂行こうか」
「お風呂ですか?」
「これくらいシオンのなら平気って言いたいけど、この格好で眠る訳に行かな
いだろ?
 シオンだってそのままじゃダメだし、シャワーでも浴びようよ」
「それはそうですね」

 もっともな意見にシオンは頷く。
 反論の余地は無い、建設的な意見。

「あーあ」
「どうしました?」

 志貴が罪悪感に溢れた顔をする。
 何が……、とシオンも視線を向ける。
 志貴がシオンの編んだ髪を手に取っていた。

 ぐしょりという感触。
 濡れていた。
 シオンの放尿によって。

「ごめん、シオン。
 髪をこんなにして……」
「洗えば良いではないですか?」
「でも……」

 シオンは不思議そうに志貴を見つめる。
 あれほど人を恥ずかしがらせ、酷い事をしたのに、こんなに落ち込むような
顔を見せている。
 こういう処が、志貴と言う男をある意味女たらしにしているのだと、判断は
する。
 しかしそれを指摘する事無く、シオンは宥めるように提案をた。

「ならば、志貴が責任を持って綺麗に洗ってください」
「洗う?」
「お風呂に行くのでしょう?」
「そうか、でもいいの?
 シオンは一緒に入るの嫌がると思ってたけど……」
「あ、そうなのですか?」

 志貴の言葉にシオンは当惑した顔。
 二人で入浴をする提案と、何の疑問も無く思っていた為に。
 志貴はそうと見て取ったが、打ち消しはもちろんしない。
 
「そうか、うんうん。嬉しいな、シオンとお風呂か……」
「反省の色がありませんね」
「してるよ。
 でもそれ以上に嬉しいんだよ。シオンは?」
「私……、ですか?」

 さんざん恥ずかしい部分を見られ嬲られ、挙句の果てになかば強制的に放尿
させられ。
 その羞恥の極み。
 そして自分のこぼした尿にまみれて異臭を放っている体。
 汚れて、ぺたんぺたんと歩く度に音を立てる髪。
 性的興奮にある時には良い。
 でも、今は志貴にはどう映っているのだろう。
 汚らしく思われていないか。
 臭くないだろうか。
 シオンは自分の手や髪の匂いを嗅ぎたい衝動を押さえている。

 ただ、確かに……、シオンもまた心躍るものを感じていた。
 志貴と今、共にある事に。
 志貴に恥ずかしい事をされ、他の誰にも見せないであろう姿を晒した事に。
 志貴が、喜んでいる事に。 
 志貴と入浴のひとときを持つ事に。

「我ながら、なんて愚か」

 呟く声もどこか柔らかかった。
 自分の心を不思議に思って、でもそれに従う事を否定はしない。

 答えになっていないシオンの言葉を志貴は肯定と正しく捉えた。
 手早く立ち上がる。
 シオンも、志貴に続く。 

 そして、シオンはふと気づく。
 本来志貴は何をしようと自分を部屋に誘ったのかを。
 それがまだ果たされていない事を。

 志貴はまだ、私と交わってもいなければ、射精もしていませんね。
 と言う事は……?
 お風呂では何があるのだろう。
 無駄に妄想を繰り広げる真似はシオンはしなかった。
 しかし、心の何処かにわくわくとするものを感じていた。

「行きましょう、志貴」
「ああ?」

 そんなシオンに、やや首を傾げ志貴は頷いた。
 浴室へ。

 二人の足音が続いた。
 どこか弾むような足取り。

 
  Fin











―――あとがき

 阿羅本さん御乱心?
 これまでもいろいろと前代未聞なお祭りを重ねて来らた訳ですが、今回ばか
りは眼を疑いました。
 秋葉で、琥珀さんで、先輩で、翡翠で、レンで(中略)、にょー。
 阿羅本さんが築き上げたものを全て崩すが如き暴挙。

 でも、参加させて頂きました。
 経験浅い分野なので手探りの試行錯誤でしたが。

 似合いそうなキャラという事でシオン。
 特に前後のお話は入れず、まんまなシーンだけです。
 これでさらにお風呂で……と続けるとぼやけるので、にょーだけ。

 ちなみに日本人の云々は、確か唐沢商会の本から……だったと思います。
 
 様子を見つつ、他の達者な方々の作品を勉強させて貰いつつ、またトライし
てみたいと思います。
 拙いにょーSSですが、お読み頂きありがとうございました。

   by しにを(2003/8/3)