その朝は、いつもの朝になる筈だった。
「う、ううん?」
おかしい、妙に下腹部がナマ暖かい。悪い予感がした私は、一気に目が覚めた。恐る恐る掛け布団をめくると、湯気がベッドの中から浮き上がった。
「あ、あ、あ」
何か、涙が出そうになった。この私が、どうして……。
おねしょをするのよっ!!
練馬
それからが、大変だった。
朝の授業開始までに、証拠隠滅しなければならない。だがしかし、こんな狭い三人部屋では当然だが、ルームメートには秘密にしたくても出来なかった。
蒼香は、朝起きて始めて見た光景が布団からシーツを必死に剥がそうとしている私だったので、一瞬目を点にした。次の瞬間には、事情を察して人ごとだとばかりに笑い出した。
「転校したり戻って来たり、不眠症にかかったりしたから、遠野の生活のリズムが崩れたんだな」
しかも蒼香は冷静に、状況を分析しだした。
「安心しろ、この事は誰にも言わないからな」
「あー! 秋葉ちゃんがおね……」
蒼香の笑い声で目覚めたらしい羽ピンの大声を、私と蒼香が二人掛かりで塞いだ。まだ早朝だが、隣室の住民が起きているかもしれないと思うと心臓が止まりそうになる。
大声を出さないように念を押すと、私は羽ピンの口から手をゆっくりと離した。
「はふぅー」
一度深呼吸した羽ピンは、私の顔とシーツの染みを見比べた。
「秋葉ちゃん、もしかして火遊びした?」
「いい年して、そんな事するわけないでしょ」
「それじゃあ、大人の火遊び?」
「尚更しませんっ!」
私は、羽ピンの手を取るとシーツの端を持たせた。
「見られたからには、あなたにも共犯になって貰います!」
「うん、わかった。わたし、秋葉ちゃんの共犯になるー」
おねしょに共犯も何もあったものではないのだが、ノリの良い彼女は味方になってくれた。どうやら羽ピンの口を封じる必要はこれで無くなったみたいだ。
共犯になった羽ピンには、シーツの洗濯を手伝って貰うことにした。羽ピンは嬉々として洗剤や洗面器を用意してくれた。蒼香の冷たい視線が痛い。私だって、上級生がやっているみたいに羽ピンをいいように使っているのは自覚している。しかし、背に腹はかえられない。
「後でちゃんとこの借りは返します」
蒼香も黙ってドライヤーを手にとってくれた。持つべきものは友達だとは、よく言ったものだ。
女子トイレでの密かな洗濯を羽ピンに手伝って貰い、その間に蒼香に布団を乾かして貰った事で、朝の点呼までにベッドは元通りになった。シーツはまだ乾いていないが、昼までにはなんとかなるだろう。
当面の危機はこれで去ったのだが、まだ問題は残っていた。そう、また今夜もおねしょするかもしれないのだ。
今朝はなんとか誤魔化したが、次も上手くいくとは限らない。今日から暫くの間は、水分を取るのをひかえよう。
水を飲まないのは勿論、三食御飯とオカズだけで味噌汁には手を出さなかった。
夜になって喉が乾いても、私は飴玉を舐めて唾液でしのいでいた。蒼香も羽ピンも、飲み物抜きで煎餅をかじっている。水気の無い菓子だけを、よく口に出来るモノだ。
「二人とも、遠慮しないでよ。見ている方がつらいじゃない」
「そう思うなら、おまえさんもあたし達に付き合え。このまんまじゃ木乃伊になっちまうぞ」
「私がそそうするのを、そんなに見たいのっ?」
「あのなあ、一日くらい水を飲まなくたって、尿意はあるんだぞ」
「それは、そうでしょうけど」
体内に水分がある限り、腎臓が勝手に濾過をしてしまうのは仕方が無い。
「おまえさんの場合、体調は悪く無いんだから規則正しい生活を維持すれば夜尿症は治るんだ。無理に治そうとして生活のリズムを崩すと、却って木乃伊どころじゃない最悪の事態になりかねない」
「最悪?」
木乃伊より酷い事態というのは、なんだろう?
「授業中に居眠りした上におねしょしたら、誰もフォローできないからな」
そ、それは非常にまずい。そんな事になったら、私は浅上を去らねばならない。そんなの、四条つかさや上級生を喜ばせるだけだ。
「それでね、わたし達は秋葉ちゃんの規則正しい生活の手伝いをしようと思ったの」
羽ピンの言葉に、悪い予感がした。
「手伝いって、何の?」
「これから毎晩、寝る前に秋葉ちゃんのオシッコを済ませておく手伝いよ」
「そんなの、一人で出来ます。どうして羽居が手伝わなきゃいけないの」
「だってわたし、秋葉ちゃんの共犯だもん」
「う……」
蒼香の方を向くと、彼女は諦めろと言わんばかりにそっぽを向いていた。確かにこれは、羽ピンにおねしょの後始末などという汚れ物の仕事を手伝わせた私の責任だ。
羽ピンに促されて、私はトイレまでやって来た。個室に私を押し込むと、羽ピンも一緒に入って来てドアの鍵を閉めた。
「どうしても、やんなきゃ駄目?」
「勿論よ。さあ、早くオシッコしましょうね」
言うが早いか、羽ピンは私の下半身を丸裸にして洋式便器に座らせた。私は、上目遣いで羽ピンの顔を窺いながら、下腹部に力を込めた。
シトシトシトシト……
閉まり切ってない水道の蛇口からこぼれる水の様に少しずつ流れる私の小水を見て、不満そうに眉をひそめた。
「これっぽっちじゃ駄目よ。全部出し切らないと、今夜もオネショするわ」
そう言った羽ピンは、私の下腹部に手を当てると、指先に力を込めた。
「ああっ」
チョロ、チョロ、チョロ……
羽ピンが私のおなかを押すたびに、尿道から勢い良く小水が噴出した。
「その調子、その調子」
何か嬉しそうな羽ピンは、私のお腹をもみ出した。
ジョボジョボジョボ……
水流は、更に勢いを増した。朝から水分を絶っていたというのに、私の膀胱がこんなに溜め込んでいたとは思わなかった。
結構な量を排水して、私の放尿は終わった。
「さあ、もうこれでいいでしょ。部屋に戻りましょう」
便座から私が立ち上がろうとすると、羽ピンが私の両肩を掴んで押し戻した。
「駄目駄目。ちゃんと全部出さないと、今夜も漏らしちゃうわよ」
私の両足を力ずくで広げると、羽ピンが私の股間に顔をうずめた。
「羽居、一体何をするつもり?」
「うふふ、尿道に残っているオシッコも全部搾り出すの」
トイレットペーパーでこよりを作ると、羽ピンはそれを私の尿道口に突き刺した。
「ああん」
生まれて初めて尿道が体験する異物の挿入感に、私は喘いだ。
「すぐに終わるから、じっとして」
こよりを持つ羽ピンの手が、前後に小刻みにスライドされる。
「ほら、尿道に残っていたオシッコが滲み出して来たよ」
「ああん、あああん」
私の喘ぎ声に気付いているのかいないのか、羽ピンは手を止めない。それどころか、何本ものこよりを次々と取り替えて尿道に差し込んだ。
「この調子なら、あと少しで全部こよりに吸い取れるね」
羽ピンの声も、今の私にはドコか遠くから聞こえるみたいだ。私の全神経は、尿道に集中していた。
「あ、あ、あーーーっ!」
絶頂に達した私は、たまらず股間から一気に潮を噴き出した。
「きゃっ」
私の潮を顔面で受けた羽ピンは、手洗い場のタオルで顔を拭いた。
「秋葉ちゃん、もっと出るなら出るって最初に言ってよ」
いや、これは小水じゃないから、私も制御できないのよ。
こうして、羽ピンの献身的な介護(?)によって、数日後には無事に私は夜尿症を克服出来たのだった。
<fin?>
まあ、知らぬが仏とはよく言ったものだな。
「蒼ちゃん、そっち持って」
あたしは、羽居の共犯にさせられていた。何をしているのかというと、熟睡している遠野をトイレに運んでいるのだ。
そう、遠野の夜尿症はまだ完治していなかった。あたし達が毎晩遠野をトイレに連れて行って、事前に夜尿を処理しているのだ。
「そっとやれよ、羽居」
トイレに運ばれて、全然起きない遠野も遠野だ。恐らく、生活のリズムの乱れがまだ治っていないせいだろう。
「それじゃあ、行くね」
下半身を露出させた状態で便器に腰掛けている遠野の股間に、羽居はこよりを差し込んだ。もし今遠野が起きたら、血の雨が降るな。
「あ、ああん」
遠野は、寝ながら呻き声を出した。次の瞬間、遠野の股間が潮を吹いた。実のところ、これを見ていると背筋が痺れるモノがあるので、あたしは羽居の手伝いをしているのだ。
「さあ、今夜のおねしょも出た事だし、秋葉ちゃんをベッドに戻しましょう」
あれは、夜尿ではないのだがなあ。
まあ、いいか。
<今度こそfin>
またやっちゃったよ、な練馬です。
「今回は、おねしょでいこう」と何故か思いついたので、誰におねしょさせようか考えて、秋葉にさせました。
シオンにしようかとも思ったのですが。
感想をいただけたら、幸いです。